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2004.12.07

人的環境

宿屋はもちろんの事、全てのお店の雰囲気を決めるものには、いくつかの要素があると思う。 立地、外装や内装、照明やパーツの選択、サービス形態や内容、そこで働く人のスタイルや動線、そして、そこに集まるお客さん達。 この中でお客さんを除いては、経営する者が意図的に操作することが出来る。 しかし、お客さんは直接的には操作できない。 どんなお客さんが、どんな格好でやって来て、お店の中でどんな様子で過ごすか。 それは、他の要素を経営者が意図的に操作したことに対しての評価であると同時に、新しいお客さんにとっては行動の見本となるもので、要素のひとつでもある。

お店側にとって、これほど扱いが難しいものはない。 下手をするとお店が一人歩きするような事態にもなりかねないし、いつの間にか思わぬ方向に経営方針がずれてゆく理由にもなる。 また、考えていた通りのお客さんが集まり、こんなお客さんであって欲しいという希望通りに、お店の雰囲気が出来上がってゆけば、これほど嬉しいと思うことも他にないだろう。 経営者冥利に尽きる、という感じである。 そうなれば、新しいお客さんも「ここのお店では、こうやって過ごせば居心地が良いんだな」と、先客を見本に学習するから、ますます良い感じに事は進んでゆく。

とある近くの日帰り温泉施設へ初めて足を伸ばした。 新しくて掃除も行き届き、清潔感のある施設だったが、湯上がりに休憩できる畳敷きの部屋で、地元の方と思わしき初老の男性たちが、缶ビールの空き缶をテーブルにたくさん並べながら、仕事の愚痴を大声で喋り続けていた。 あれでは旅行客はあの部屋に入ってこられないだろう。 そういった光景にそこそこ慣れている筈の私でさえ、早々に退散である。

客商売は難しい。 改めてそんなことを考えていた。

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