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2005.03.01

「窯変 源氏物語」 その3

ついに読み終えた。 14巻・・こんなにまとめて本を読んだのは、久々のことだった。

まあ、国語問題の解答的に一言で示すならば、「女性が自立した生き方を選べなかった時代に、それを悔しく思った女性執筆者が、登場人物の生き様を通して、時代の光と影を切り取ったお話。」、とでもなるのか。 書かれてからこんなにも時代は動いているのに、人間って奴はちっとも変わっていないものなんだな・・と、読んでいてしみじみ考えていた。 登場人物の一人一人が、「ああ、こんな男って居るよなあ。」とか、「こんな女も居る居る!」という感じで、非常に身近な印象なのだ。 表面的な生活は全く異なっていても、本質の部分では、現代社会と何ら変わりはない。 題材の中心が「男と女の恋物語」だから、余計にそうなのかも知れないが。

当然ながら、登場人物の出世に伴い、肩書きの呼び名がころころと変化するので、それについてゆくのは大変だった。 各章の冒頭に、登場人物たちの人間関係を示した図があるのには、大変助けられた。 「現在の右大臣は誰だっけ?」、そんな場合には、すぐにその図を見直して確認する・・そんな作業が続いた。 もともと狭い社会でのお話だ。 血縁関係のつながりは濃く、尚且つ極めて政治的で、婚姻は特殊な場合を除いては基本的に策略絡み。 お姫様達の存在は、政治的策略の駒として使われた。 女性としてはたまったものではない世の中だったのだろう。 まあ、当時は、それを当然と思うような教育を受けていたようなので、問題にはされなかったようだ。

宮人達の日常の生活描写も、ずいぶん興味深かったのだが、ちょうど今はお雛様の時期なので、「段飾り」の様子と重ね合わせながら読むと楽しかった。 右大臣・左大臣、官女達、橘の木、御所車・・そのままの世界が本の中で展開されている。 ただひとつ違ったのは、雛飾りでは鼓や太鼓を持った人形があるが、源氏物語の中に出てきた楽器は琵琶・横笛・和琴・唐琴だけで、打楽器は登場しなかった。 実際はどうだったのだろうと、興味が増す。

当時の時代背景を考えれば、キスの話題に触れるだけでも、相当な官能小説だったのだろう。 後半にはなかなか大胆な描写も出てきて、驚かされたりもした。 著者の開き直りのようなものを垣間見たような気分。 橋本治氏の「女心・男心」の描写は、的確ですばらしく、読みながら何度唸ったことか知れない。 この本を選んで正解だったとつくづく思う。

雛人形を見ながらしばらくの間は本の余韻に身を委ねていたい、そんな気分だが、現実はそうもさせてくれないようである。 あわただしい毎日の中で、断片的に思い出しながら、少しふわっと穏やかな気分になるのが精一杯みたいだ。

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