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2005.03.21

イースターの思い出 その4

また別の病棟で別の実習が始まり、日常に追われているうちに時は過ぎていった。 イースターが近づき、病院のあちらこちらに色付けしたゆで卵の「イースター・エッグ」とひよこの人形などが飾られる。 ちょうどそんな時期に、私が実習していた病棟の指導者を通じて、外科の婦長から呼び出しがあった。 何か大変なミスでも犯したのかと蒼ざめた私に、「大丈夫。 前の受け持ち患者さんのご家族が、どうしてもあなたに会いたがっているらしいので、お昼休みを前倒しして外科に行きなさい。」とのこと。(実習病院はこういう場面で人の気持ちを無碍にしない、温かい人間的な病院だった。) 外科のナースステーションで待っていたのは、亡くなったおばあさんの一人娘の、あの中年女性だった。

「あっ!」と、お互い顔を見つけた瞬間、何故だか分からないままに二人とも泣いた。 外科のスタッフも一緒に苦笑いしながら、とりあえずご挨拶して廊下の長椅子に腰掛けてお話をした。 お嬢さんのお話では、前の週末に納骨を済ませたので、皆さんにお礼に来たという話だった。 「大変でしたね」とか「少しは落ち着かれましたか」などと他愛の無い話の後、あの日向ぼっこの話に。 今となってはもうずいぶんと昔の話のように思える懐かしい思い出を、皆で分け合った。 お嬢さんが言った。 「じつはお墓を新調して、お墓の引越しもしました。 今までのお墓はお寺の裏庭にあって、周りが高層マンションに囲まれてしまって薄暗い所で。 新しいお墓は、ちょっと遠いんですけれど、山を切り開いた丘の上にあって、晴れてさえいれば一日中、日がさんさんと照るような場所です。 母は日向ぼっこが大好きだったから、一目で決めました。 母も喜んでいると思います。」 そして、遠くを見るような眼で「夏は暑そうなんですけどね。」と笑っていらした。 廊下の出窓には、藤の籠に積まれたイースター・エッグが陽だまりの中でピカピカ光っていた。 私はあの時のおばあさんが少女のようにはしゃぐ姿を思い出して、「あんな陽だまりを見ると、お母様がそこに笑っておられるような気がします。」、ふと口にしたら、「あっ、私も今同じことを言おうと思ったところでした!」と、お嬢さんが驚いて言われた。

それまでキリスト教の授業で、どんなに「ご復活」のことを聞いてもピンと来ないし、正直「マユツバものだな・・」くらいにしか思っていなかったのだが、この時初めて、「こんなふうに亡くなった方が復活されているのだとすれば、素敵なことなのかも知れないな。」と、私は思ったのだった。

あれから随分経ってしまった。 結婚・引越しを経由しながらも、そのときの実習レポートは今も大事にとってある。 臨床から離れた私には、あの時の課題は今もそのままに置き去りのままだ。 イースターが近づいてくると、毎年なんとなく思い出して祈りたくなる・・それはきっと、あのおばあさんがちゃんと復活して、「あなた、大事なものを忘れてはいけませんよ。」と教えてくださっているのかな、とも思う。

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