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2005.03.22

スローフードの偉大なる力

たまに、見るからに「心が荒んだ感じ」のお客様がチェックインする。 ご本人は気付いておられないのだと思うが、こちらに対する不信感みたいなものが、丸見えである。 もう知っている・・こういう感じの方は、別にメモリアや私たちだけに具体的な不信感があるわけではなくて、大袈裟に言えば日ごろの全ての出来事や知らない人・初めて会う人みんなに不信感を持つのだ。 自分を解放できないから、何を見ても、やっても、心から楽しめないし納得できない。 本人も辛いだろうが、その原因が自分にあることも判っておられない方が多いようだ。 そして、そのようなパートナーと一緒に居ると、だんだん感化されてくるのか、旅行のお相手も似たり寄ったりの形相を呈しているのが不思議である。 ウニ若しくはイガ栗みたいに、「見えない刺」がその人の周りにびっしりと付いていて、何かあれば一発触発のような際どさのオーラが見て取れる。

景気の悪い時代が続く中で、こういった感じのお客様は増えているように思う。 仕事が忙しくて大変なだけではなく、仕事そのものに納得できていなかったり、給料に不満があったり、職場の人間関係に心をすり減らしていたり、自分にはどうすることもできない仕事上のシステム構造にいらいらしたり・・。 話を聞いているだけでも「いつから日本はこんな社会になっちゃったんだろう?」という思いがする。

さて、軽症の場合は、チェックインしてウェルカム・ドリンクなどをお出ししながら、ラウンジで少し会話するだけで、もうほぐれてくる場合もあるが、夕食ぎりぎりに到着なさった場合は、お話もそこそこにすぐ客室へのご案内となるので、そんな機会も失われる。 で、いきなり夕食の時間になる。 おいでいただいたことのある方にはお判りだと思うが、ディナーの時間、お客様の対応は全て『ますたあ』が受け持つ。 私は厨房から出られないので、『ますたあ』指示してくれるタイミングに沿って料理を作るだけだ。

人は不信感が強いと、そこで出される食事も喉を通らなくなるようで、上手くは言えないのだが「妙な残り方」でお皿が厨房に戻ってくるものだ。(商談などのお客様が多い料亭などでは、さぞかしこの部分に気を遣って料理しているに違いない!) 要するにものを食べることに集中できていないお客様の気を、どうやってこちらに呼び込むか、そこが大事になる。 メモリアの食器は決して高価なものではないし、見るからにゴージャスな食材を使うほどの材料費もかけられない。(これでもがんばっているつもりではあるけれど。) でも、『ますたあ』は言う。 「ウチの食事を食べると、人が変わる」そうだ。 不信感の刺が取れて、本来あるべきその人の様子になってゆくのが見えるらしい。

決して特別なことをしているわけではないから、きっとスローフードの力なんだと思う。 

旅行を終えて仕事の日々に戻ってしまったら、また刺が生えてくるのだろうと思うけれど、ほんの少しの間でも「楽な気持ち」で過ごしていただくことのお手伝いができれば、それは私たちの幸せでもある。 サービス業ってそういうものなのだろう。 ウチではファーストフードはお出ししておりませんので、準備のために然るべきご予約が必要になっていますが、何卒ご理解・ご協力の程をお願い申し上げたく・・。^^; 

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