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2005.03.10

「いご海苔」

私の両親の実家は東京と新潟だ。 二人ともかなり標準語に近い日本語を使っていたので、私も言葉では苦労した覚えが無い。(これは非常にありがたいことだった。) なので、自分が使っている日本語は標準語であると錯覚している感があり、たまにポロッと「実は方言だった」という単語が見つかるとショックである。 この歳になるまで標準語だと思っていた言葉が、実はそうではなかったとなると、ショックと同時に脳内回路の修正が難しいのも事実だ。

父と、幼い頃に一緒に暮らしていた父方の祖母は、「ひ」と「し」の区別が怪しい。 私も大人になるまで、布団は「ひく」ものだと思っていた。 「布団をひくから、そこをどいて。」と言って、何度『ますたあ』の訂正を受けたことか。 「敷き布団っていう立派な単語があるじゃない」、と指摘されれば、なるほどと納得するのだが、会話の中ではどうしても「ひく」が顔を出す。 「布団に付随してくる動詞」を自分が間違えている自覚があるので、まず、頭の中で漢字変換して「敷く」を思い描く。 で、この漢字を読み取るようにしてからは、「しく」と言えるようになった。 いまでも自然には出てこない。 漢字変換のひと手間が欠かせないのである。

新潟には「長まる」という動詞があるようで、これは「横になる」とか「ゴロンと横たわる」といった意味だ。 多分、体を長く伸ばすことに由来しているのではないかと思う。 食事の後、お腹がいっぱいで半分眠くなりかけているような時に、「長まれば楽だよ」と話し掛ける、そんな感じで使われる言葉だ。 これも私は標準語だと思っていた。 結婚して間もない頃、『ますたあ』に「長まれば」と話したら、「今なんて言ったの?」 「長まれば、って言ったけど。」 「それ、どういうこと?」などというやり取りがあって、標準語でないことが発覚した。 この「長まる」に関しては、『ますたあ』の方が慣れてくれたので、我が家の中では限局的に通じる日本語として使われている。

母をはじめ新潟の人の中には「い」と「え」が混乱する方も多い。 江戸は「いど」、井戸は「えど」なのだ。 これは母も自覚していて直そうとするあまりに、更に逆を言ってしまい、結局間違った発音になったりしていた。 私は「い」と「え」に関しては間違えていない自信があったのだが、先日とんでもない事実が発覚した。

新聞の別冊に旅行の特集があり、新潟と佐渡島が取り上げられていた。 郷土料理のコーナーに、海草を砕いてから火を通し羊羹のような形に固めた食べ物が紹介されている。 海草の味だけで固め、それを薄くスライスし、酢味噌やわさび醤油で食べるものだ。 私も大好きで新潟に行くと必ず買ってくるのだが、幼い頃からそれは「えご海苔」と呼んできた。 ところが、新聞には「いご海苔」とある。 ・・えっ?!いご海苔だったのか・・。 あまりのショックで呆然としてしまった。 ショックが大きかったので修正できるのではないかと思っているが、さて、どうなりますやら。

自分が何の疑いも無く使っている言葉の中には、まだまだ、「実は間違っているもの」や「実は方言」が混じっているのかもしれない。 ちょっと自信がなくなってきた。

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コメント

こんばんは、新潟在住のもうぞうです。
新潟では、「えご」が多いようです。もちろん「いごねり」もあります。「いご海苔」という言い方は、見たことがありませんね。

下記にも関連記事がありますので、ご参照ください。
http://jp.air-nifty.com/umetoko/2004/09/post_9.html

投稿: もうぞう | 2005.05.10 20:57

もうぞうさん、はじめまして。
書き込みありがとうございます。
・・そうですよね!「えご」ですよねえ。
私も気になって、あれからひとしきりネットで検索をかけてみたのですが、「いご海苔」は見つけることができませんでした。
ただ、読んでしまったのが天下の?A新聞だったものですから、イージーミスを犯すとも俄かには思えない印象でして。
現地の方にお墨付きをいただけて、心強いです!
自信を持って「えご海苔」という言葉を使おうと思いました。(ああ、食べたくなってきました!)

投稿: リーボー | 2005.05.11 13:15

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