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2005.04.25

根拠

動けない私に代わって、賄い食を用意してくれている『ますたあ』が、分厚い料理本をパラパラめくりながら聞く・・「ねえ、リンゴが茶色くなるのは酸化だよね?」 「うん、そう。」と、私。 「じゃあ塩水と酸化はどういう関係があるの?」 どうやらリンゴの切り口を塩水に漬けておけば変色しなくなると、私が説明した件の話らしい。 「塩水に漬けると、浸透圧で切り口の表面の細胞が脱水されるでしょ。 そうすると酸化する成分の酵素も水分と一緒に流れ出てしまうから。」 「ふーん、じゃあ高張液なら良いわけだ。」 「そうそう。」 「砂糖を溶かしたシロップでも良いことになるよね。」 「ウン、大丈夫だよ。」 「何で塩なんだろう?」 「砂糖より安いからじゃない?」 「そっか・・。」 「酸素に触れなければ変色しないから、表面に膜を作っても大丈夫。」 「膜?」 「そう、脂の膜。 例えばマヨネーズとかヨーグルトとか。」 「ああなるほど。 酵素が関与しているならば、その酵素を壊しても良いんだよね。」 「そうそう、加熱とか酸に触れさせるとか。」 「ああ、それでレモンかけるわけね。」 「うん。 表面の酵素を水で流したって、短時間なら変色しなくなるよ。」 「なるほどね。」

『ますたあ』に料理を説明する場合には、その根拠を明確に示すと、次回からそれを応用してどんどんできることが増えてゆく。 多分料理に限らず、全てにおいて普段からそのような考え方をしているのだと思われる。 こちらはいつもそんなことを意識することも無く、リンゴを剥けば反射的に塩水を用意しているので、ちゃんと質問されると、改めて自分も考え直す機会を与えられて面白い。 何気なくやっている事柄の見直しにも繋がって、新鮮な気分だ。

「料理は科学だ」と言っている人がいた。 まさに『ますたあ』の頭の中では科学的な見地で料理を作っているに違いない。 料理本を見ながら、「作り方ばかりじゃなくて、今、話してくれたような根拠を解説してくれれば良いのにねえ・・」と言う。 私も似たような思考回路ががあるので、ごもっともだと共感しながらも、「多分そんな本は売れないんだろうなあ」、と、思った。 二人とも口には出さなかったが、そう考えていたに違いない。 

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