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2005.09.17

恋の力

時々お知り合いの女性から電話が来る。 私よりもちょっと年上である彼女は、結構長い間鬱病に苦しんでいた。 最近は調子もだいぶ上向きになってきたようで、話し方のテンポも速いし、語彙も多いし、表現もイキイキとしている。 何かのきっかけがあったのかを尋ねてみたら、どうやら興味を持つ男性が存在しているようだ。 まだ20歳代のがっちりした男性らしいが、ばしばしの体育会系の中で学生時代を過ごしてきた方だそうで、女性の扱いに慣れていない所が、年上のオネーサンとして「グッときた」らしい。 異性に対する興味はこれほどまでに人を変えて心の病まで治してしまうのか、と、驚くような、再納得のようなえもいわれぬ感覚で、話を聞いていた。

気持ちは十分に解る。 実際に新たな恋愛をしているわけでなくても、私だって仕事に追われる中でお気に入りのバンドの曲を聴けばパワーが出るし、ライブに行けば莫大なエネルギーをチャージしたような気分になる。 ヨン様を追いかけているオバサマ達のあの輝いた表情を見よ! あのパワー全開の様子を見よ! ドキドキする感覚はものすごい活力源になり得るのだと思う。 片思いだって、恋は恋だろう。

看護師時代一緒に働いていた同僚は、現在は某ホスピスで師長さんを務めている。 時々長い手紙をやり取りするのだが、以前貰った手紙の中にこんなフレーズがあった。 「・・結局、人はいくつになっても『男と女』なんだなあ、と、最近つくづく思います。 恋愛の力はどんな抗がん剤にも勝り、モルヒネよりも強い鎮痛作用があり、死の恐怖さえも払拭するのです。」 はじめの内は師長自身も「この患者さん、いい年をして恥ずかしくないのか」みたいな思いがあったのだそうだけれど、最近は「生きるということは、つまり、そういうエネルギーに右往左往することなのかもしれない」と、思い始めたのだそうだ。 「きっと人間は死ぬ時まで、『男と女』のことに振り回され続けるものだと思います。 なんだかちょっと情けない気もしますが。」

そこはかとなく肌寒い季節になると、人恋しさも増すのかもしれない。 人の心はこんなに複雑なのに、その根底はあっけないくらいに単純? 思い当たる節がないわけではないので、妙に説得力を感じてしまうのだった。

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