もうすぐスキーシーズン
とある一人の男性をめぐる二人の女性のお話。
男性は学生の頃からスキーが趣味で、毎年冬からゴールデンウィークの頃までは、仕事が休みの日はほとんど全部スキー場に通っていた。 彼にはお付き合いと言うほども無いけれど親しいガールフレンドが二人居て、彼女達は二人ともスキーをしたことが無く、別に強い興味も持ってはいない。 ただ、スキーシーズンが来ると彼はデートの時間も作ってくれなくなるので、とても寂しく感じることが共通点だった。
一人の彼女は言った。 「あなたをスキーに取られるようで寂しいのよ。」
「だったら君もスキーを始めれば良いじゃないか。 そうしたら僕と一緒に時間を過ごせるようになるんだし。」
かくして彼女はスキーを始めた。 始めてみたらどんどん楽しくなって、彼氏以上にのめりこむようになった。
もう一人の彼女にも同じ事を言われた彼は、同じように答えた。
「だったら君もスキーを始めれば良いじゃないか。」
しかし、彼女はどうしてもスキーを始める気になれずに、彼が捕まらない冬の間は、自分の時間として有意義に過ごす方法を見つけ、いつの間にか彼に会わなくても寂しくないようになっていった。
何年かが経って、前述の彼女は彼と結婚した。 今では彼を放ってまでもスキーに出かけている。 そして、後述の彼女は彼と友達の関係のまま、彼女自身それなりの充実した日々を送っている。 三人とも実在のノンフィクションである。
どちらがどうということではない。 ただ、相手の趣味をどのように受け入れてどこまで同調するか、という問題は、パートナー選びのひとつの基準になり得るのではないかと、そんなことを思っているだけのことだ。 スキーの話題を目にする度にいつも三人のことを思い出す。 そろそろ雪便りも届き始める頃・・スキーヤーにとっては血が騒ぐシーズンの到来だろう。 趣味は自分への贅沢なご褒美の時間でもあり、また、時に厄介者であるのかも知れない。 人生って不思議。
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