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2005.11.22

3つの小さなキス

朝起きて、パジャマのまま玄関先に出て、身震いをひとつ。 放射冷却でキーンと冷え込んだ空気に追い立てられるように、小走りに車の傍へ。

今日は新車の納車の日。 そして、愛着の染み込んだ車が引き取られてゆく日。 一台はもう廃車になって、もう一台は中古車市場で新しいオーナーを探すことになるそうだ。 そんなに毎日乗っていたわけではないけれど、路線バスも電車も届かない山の生活の生命線として、一緒に過ごしてきただけに思い入れもひとしおである。 特に廃車になる古い方の車は、東京に住んでいた時に買ったもので、今まで「どこに行くにも一緒」だった。 さすがにご老体でいたる所にガタがきていたから、本当にご苦労様という気持ち。

2台の車の鼻先にそれぞれ「ありがとう」の小さなキスをした。 車体の表面に降りた朝露が冷たく私の唇に移った。

新車を運んできたディーラーさんが、代わりに運転して去ってゆく様子をずっと見送っていた昼下がり。 きれいに澄み渡った空から、クヌギの落ち葉がヒラヒラと舞う中を、見慣れた後姿が消えていった。 季節にふさわしいきれいな絵・・なんだか映画のラストシーンのように見えた。

納車されたばかりの新顔は、ディーラーさんによる確認の説明の短い間にも、もう屋根の上に落ち葉を乗せて、すっかり山の光景に馴染んでいるので笑ってしまう。 おまけにリアウインドゥでは四つ星テントウがのんびりと散策中だ。 オーナーより先に土足で上がるとは図々しいぞ、と、少しばかり嫉妬。 自分たちが新しい車に馴染むのも、時間の問題だろう。 楽しみだ。

別れと出会いの繰り返し。 生きてゆくうえで繰り返される摂理。 切なさとワクワクと。

新車にも「よろしくね」の小さなキスをした。 ボンネットは秋の陽射しを浴びて温かかった。

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