カッコ悪くたって
昨夜NHKで、小田和正さんを取り上げた番組を放映していた。 「団塊の世代」と呼ばれる年齢の社会人が、まもなく一斉に会社勤めをリタイアするとの事で、その社会的影響についてフィーチャーした番組が多く流れている。 昨日の番組の視点も、「団塊の世代に支持される小田さん」に焦点が当てられていた。 小田さんも58歳、まさに団塊の世代ど真ん中なわけで、その自分が何をみんなに伝えられるのか、と、必死になっている姿が映し出される。 「のた打ち回っているようなもんだよ」と、洩らしたその言葉に、全てが集約されているような気がした。
「ありのままの自分を見せる」というテーマが、彼の中には存在しているらしい。 若い時と違ってツアーを組めば移動のスケジュールに体調管理がついてゆかない。 本番のステージで歌の出だしを間違え、舌を出して照れる。 舞台を走れば息が上がって唄が続かない。 それをカバーしてもらうように、客席の最前列にマイクを向ける。 でも、その方がかえってお客さんが盛り上がってくれる、そんな映像が続いていた。 小田さんを「特別な人」と逆差別しないことで、彼を身近に感じ、「彼があれだけできるんだから、自分もまだ何かがんばれるかもしれない」と希望を持ち始める、そんな共感が伝わっているようだった。
カッコ悪い自分を見せるのは、勇気が要る。 長い間人気商売をしてきた人は、余計にそうだろう。 カッコ悪い自分を曝け出せば、ある一定の割合でさげすむ人が出てくることは避けられない。 でも、その恥ずかしさを乗り越えさえすれば、ぐっと近付いてくる人達も現れて、力を貸してくれたり何かを分かち合えたりもする。 そして、何よりもカッコつけなくていいのは楽なはずだ。 肩の力を抜いて、「ごめん、失敗しちゃった。」と言えるのは、すごい事なのだと思う。 もちろん、そこには出来るだけの努力が前提になるのは、言うまでもない事だけれど。
年末、小田さんは自分のステージにSMAPの中居さんを招いたらしい。 唄に自信がない中居さんにはその意図がよくわからなかったようだし、本人に尋ねられても小田さんは答えをごまかした。 だが、その過程をドキュメントした番組のスタッフにぼそっと言う・・「若い時から特殊な環境でずっと過ごしてきた人でしょ。 今のうちに一度カッコ悪いような経験をすれば、逆に『ああ、こんなのもアリなんだ』って気付くじゃない。 そういう経験をさせてあげられないかと、ね。」 若い頃の自分も通り過ぎてきた、世間の期待に応えようと必死の状況と、それをかなぐり捨ててカッコ悪くなった自分と、新たに手に入れた世間の共感と『楽(し)さ』と。 ただし、ステージの中居さんは、(普段に比べて?)非常に正しい音程で唄うことで大役をこなしたので、どこまで彼がそれを掴み取ったかは疑問ではあるが。
本当の意味で自分のありのままを受容するためには、ある程度の歳月や経験が必要なのだろう。 そのときに初めて、カッコ悪い自分も正々堂々と曝け出せて、それと引き換えに、何かを伝える武器を持つことが出来るのかも知れない。 そんな事を、テレビを見ながら考えていた。 まだまだだな、自分・・。 私が今の小田さんと同じ58歳になった時、どれだけ曝け出せているだろうか。 なんだか、歳をとってゆくことも少し楽しみになったような、そんな後味が残された番組だった。
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コメント
TB、丁寧なコメントありがとうございます!
中居君の来ていた収録コンサートにいました。確かにあの時は小田マジックで?とても上手に歌えてしまいましたね。
小田さんのすごさは、いつも歳相応の「かっこよさ」がある生き方をしていること。普通に現在のお顔を拝見していたらただのお爺さん。そして多分に、わが道をゆくナルシスト。でもやっぱり、憧れと尊敬を感じずにはいられません。
投稿: ぼくてき | 2006.01.23 23:09
ぼくてきさん経由で、こんにちは、です。いつもピントずれの記事かいてますが、よろしかったら・・・。ということでトラバさせてくださいまし♪
投稿: ぽぽ | 2006.01.23 23:39
ぼくてきさん、いらっしゃいませ。
こちらこそトラックバックいただき、ありがとうございます。
本当に昨日のテレビで写っていた小田さんは、お爺さんの顔になっていましたね。 たまたま疲れている時の録画だったのかもしれませんが・・内心ショックでした。 でも、やっぱり素敵!って、これを贔屓目と言わずに何と言う?!
ぽぽさん、こんばんは。
ようこそおいでくださいました。
いえいえ、小田さんつながりで、トラックバック歓迎です。 当方もTB張らせていただきますので、よろしくお願いします♪
実はヤフーさんのサーバーが重たくて、ぽぽさんのサイトにコメントが書き込めませんでした。 とりあえず、こちらサイドで失礼します。
『がんばろう』という時に、『さて、何をする事ががんばる事になるのだろう?』などと思う事も多いワタクシ・・。 ただ、気合とか意気込みとか、そういった部分は気持ちの持ちようでずいぶん違う気がしますね。 音楽にパワーをもらって、お互いくじけずにまいりましょう!
投稿: リーボー | 2006.01.24 00:34