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2006.03.03

雪と上弦の月

夜になってから、ちょっと出かけてきた。

家を出る時にはキーンと冷たい上弦の月が光っていた。 車のドアに手をかけたまま、あまりのきれいな形にしばらく見とれていた。 月のイメージを分けてもらうような気持ちで、見上げたまま深く息を吸い込んで、寒さに身震いして、慌てて車の中へ滑り込む。 しばらく震えが止まらなかったのは、吸い込んだ月の冷たさのせいだったのだろか。

県道を使って東へ向かうと、標高が高くなるにつれて雨が降り出し、やがて雪に変わってきた。 ヘッドライトの先から、細かい粉雪が水平に吹きつけてくる。 車の周囲を流れる風の形に、雪がきらきら視界を流れてゆく。 風力の実験室のようで、姿を後ろから見たくなった。 外気温は0℃まで下がり、ガラスが曇り始める。 やがて、路肩にうっすらと積もり始め、黒く濡れた道とのコントラストがきれい。 信号機の色も粉雪に霞んで、優しい色に見える。 心の中に優しい光景をいくつか思い出しながら、車の中から冬を見送るような気持ちで過ごしていた。

雪は場所によって降ったり止んだりしながら、ずっと私に付いて来た。 闇に浮かぶ梅の花にも、どこかの家の庭先に咲く鉢植えの花にも、うっすらと絹のようなベールを被せていった。 すれ違う車もまばらな、誰も知らない中で、厳粛な結婚式が執り行われたような月と雪の光景が、私の胸の奥に刻まれた。

不思議な夜のドライブだった。 

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