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2006.06.29

両親とケータイ

しばらく前に兄が実家の両親に携帯電話をプレゼントした。 それぞれに一台ずつ。 「着信音の設定とか、出来てる?」と、聞くと、「なかなか難しいんだよね」なんて言いながらも楽しそうだ。 年齢的なこともあるし、出先で何かトラブルがあった時のための連絡手段として、持っていてもらえればこちらも安心だと思い、気の利いたプレゼントをしてくれた兄に感謝する思いだった。

しばらく経って、私が実家に立ち寄った時のこと。 もうそこそこ耳が遠くなってきているためか、結構大きい音量でテレビをつけている中、何か電子音の音楽が聞こえた。 短くて同じフレーズを繰り返しているようだが、テレビの音に邪魔されて聞き取れない。
「何の音?」、と、私。
父は「何が?」 どうやら私の聞いている音楽を認識していない様子だ。
「何か短い音楽が鳴っているんだけど・・」
「そう?」
「目覚まし時計のアラームが変な時間にセットされてるとか、ない?」
「そんなのは使ってないよ。」
「灯油とか牛乳とかの移動販売とか」
「いや、来ないよ。」
「ゴミの収集の合図とか・・?」
「ないない。」
会話の間もずっと鳴り続けているので、とうとう私がリモコンでテレビの電源を切ってしまった。 すると、ワンフレーズだけ聞こえて、ぱったりと切れてしまった。 それを聞いた父が慌てて、「あっ、ケータイが鳴ってたのか!」 慌てて着信履歴を見ると同時に、固定電話の呼び出し音が鳴って。 電話の相手が固定電話にかけ直してくれたのだった。

電話が切れてから、携帯電話の呼び出し音量が最大になっていることを確認している父に、「マナーモードにして、ポケットにでも入れておいたら?」と、提案してみた。 すると、ちょっと疲れてゴロンと横になったりする時に邪魔だし、出かけて帰ってきた後にシャワーを浴びたりすると、そのまんま洋服と一緒に洗濯機に入れかけたり、首からぶら下げると肩がこって、結局ダメだと言う。 「うーん、そうか・・」なんて聞いていると、母が居間やキッチンの辺りでゴソゴソやりながら、「あれぇ?」とか「おかしいなあ?」とかぶつぶつ言いながら首を傾げている。

「どうしたの?」、と、尋ねると、今度は「私のケータイ、どっか行っちゃった。」 内心笑いそうになりながら、一緒に手当たり次第新聞等をひっくり返してみるが、なかなか見つからない。 はたと思いついて言ってみる・・「そうだ、お父さんのケータイからお母さんのにかければ、音が鳴るから判るんじゃない?」
すると、母が首を横に振りながら速攻で否定。 「だって、電源切っちゃってるもん!」・・ドリフターズの長さんの声が頭の中で聞こえた気がした。 「ダメだ、こりゃ。」

お年寄り向けの単機能携帯電話も人気のようだが、これから高齢化が進んでみんな老眼になって、新しいことを覚えるのが難しくなって、細かい指の操作が出来なくなったら、なんて考えたら本当に頭が痛くなってきた。

これはもう慣れてもらうしかないと考えて、その後、実家に電話する時には、父か母のどちらかの携帯電話の番号をコールするが、出なかったり電源が切られていたりで、いつも固定電話にかけ直しだ。 まあ、向こうからかかってくる急変自体が無いだけでも、充分ありがたいことなのだけれど。

やれワンセグだ、ウェブ2.0だ、などとは縁遠い人達も、世の中にはたくさんおいでのご様子である。 これもまた情報格差が広がっているひとつの現実なのだろう。

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