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2006.08.13

そんな単純な問題ではないと思う

少し前、特別養護老人施設で性的な暴言があったという事件のニュースが流れていて、非常に複雑な気持ちになった。 起こった事件そのものは表面的だが、この問題はすごく複雑な背景を持っているので、多分近い将来においては、同様の問題がたくさん表面化してくるのではないかと思う。

義父の介護なんだかんだで、思うところもたくさんあるわけだが、事件を聞いて一番に考えたことは、「家族が内緒でレコーダーを隠しておく状況って、どういうことよ?!」だった。 事件の内容は一方的にしか聞こえてこないから、そりゃあ性的暴言を吐いた職員は問題だったに決まっているけれど、なんでそんな状況になるまで施設と家族の関係がこじれてしまったのか、それが解らない。 普通に考えれば、入居者の家族だって初めからそんな陰湿な手は使わないだろうから、いろいろな形で施設側に申し入れをするだろうし、施設側だって、現場でヘルパーがどんな介護を提供しているかくらい、知らないはずが無いだろう。 職場なんて狭いものだし、入居者や介護職員がころころ入れ替わるような状況とも考えにくい。 家族をの世話をお願いする・プロとして介護を提供する、その間に相手を信頼する気持ちが育たなかったことが、問題の本質なんじゃないだろうか。 本来は入居者と介護者の間に信頼関係が成立することが、もっと大前提ではあるのだが、現場ではそんな奇麗事だけでは済まない現実があることも理解できるので・・。

若い人が志を立てて勉強し、ヘルパーの資格をとって働き始める。 しかし、どんな仕事でもそうであるように、頭の中に思い描いていたことと現実のギャップに悩み、持っていたはずの志を忘れかけてしまう。 一生懸命介助してきた相手が昇天してしまえば、「今まで自分は何のためにやってきたのか」と、空しさを感じるだろうし、ましてや近しい人の死に接する経験が少ないままで育ってきたら、それだけでも十分ショックだ。 しかも、現場の介護は猫の手も借りたいほど忙しく、自分の心の悲しみを客観的に見つめる時間も無いし、家に帰れば疲れ切ってバタンキュー・・そんな日常では、自分自身を消耗してゆくばかりだろう。 また、認知症などでコミュニケーションが取れなかったり、どんなに自分ががんばっても、どうしても受け入れてもらえなかったりする場合もあるだろうし、それを乗り越えるだけのタフさを一方的に求めるには無理がある。 死生観、倫理観を自分の中で育ててゆけるように、現場で手をとって一緒に導き教えてあげなくてはならない。

話が脱線するが、最近増えてきた「お金持ちのお年寄りをターゲットにした、すごく立派な老人施設」・・入居に億単位のお金が必要な、お城みたいなヤツ。 あれ、運営するの、大変だと思いますよ。 いや、運営と言っても「現場」がね。 介護職員は苦労しますよ、きっと。 誰でも年を取れば我侭になるのは当たり前な上に、お金持ちで、「お金で何でもやってもらえる」状況に慣れちゃっている人って、どうしても我侭度が強くなりがちだし、プライドも高いだろうし。 みんながみんなそうだ、なんて言いませんが、「こっちはこんなにお金払って入居したんだから、やってもらえて当たり前だ」みたいな構図はミエミエ。 そんな中で、入居者や家族と信頼関係築かなきゃならないんですから、ねえ。 よっぽど介護職員に立派なお給料用意して、「お金が儲かるから」って割り切って仕事してくれるような人を集めてこないと・・。 失礼。 大きなお世話でした。

私は病院で看護職員の卒後教育の仕事に携わっていたことがある。 そこでの問題と、今回の介護職員の問題は、構図がよく似ているのだ。 介護現場がさらに厳しいだろうと容易に想像するのは、看護の仕事には長い歴史があり、同じように悩みながらもがんばってきた諸先輩がたくさん居られるが、介護のプロが活躍し始めてからの歴史は、それに比べたら短く、しかも社会が介護者に求めるシステムが二転三転し、未だに発展途上にあるからだ。 まさに混乱の中、手探りでがんばってくださっている状態ではないか。

サーフィンしていた中で見つけた、「さるさるばななさん」のブログ・・現場の声が手に取るように書かれていて、頷きながら読んでいた。 義父がお世話になっている施設の介護者さんたちの顔が、浮かんできた。

私を含む病院の卒後教育担当チームが、どんなことをやっていたかは、またの機会に触れようと思う。

追伸(8月15日)
これもまた現場の生の背景・・。 でも、できることから変えてゆかないと・・ね。

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コメント

リーボーさんこんにちは。さるさるばななです。
ブログへのコメントありがとうございました。
この記事によって、多分、今は日本中の老人ホームが疑いの目で見られているんでしょうね、ちょっと悲しいです。
リーボーさんがおっしゃるとおり、ほとんどの施設が頑張っていると思うし、厳しい状況下で働いている現状があるのは事実です。そのことを多くの方に知っていただきたいものです。
あの記事以降、いろんなメディアに報道されていますが、特にワイドショーなどのテレビ番組のコメンテーターが、けっこう無神経なことを言っているのを聞くとガッカリしてしまいます。
でも、私たちは、自分たちの仕事に、自信と誇りをもってやっているんだってことをアピールするチャンスだと思って、これからもいいケアをしていきたいと思います。
(もうちょっと人員が増えるとうれしいですけどね・・・。給料がもっと高ければ人が集まるんでしょうかね・・・。)
ところで、リーボーさんのブログに初めて訪れたんですが、シェフをやっていらっしゃるんですね?
お料理ができる方はうらやましいです。私はレパートリーが少ないし、いい加減な知識しかないため、主人の実家から見たこともないような野菜が届いたりすると、もうどうしたらいいかわからないこともあり、最近はお義母さんが荷物と一緒に調理法を書いたメモを入れてくださるくらいです。
リーボーさんのブログは、まだこの記事しか読んでないんですが、調理のことなんかもお書きなんでしょうか、またゆっくり読ませていただきますね。
リーボーさんも良かったらまた私のブログに遊びに来てくださいね。
長々と失礼いたしました。

投稿: さるさるばなな | 2006.08.13 19:53

さるさるばななさん、いらっしゃいませ。
ご来訪ありがとうございます!
そう、あの無責任なコメントを言う人達、何とかして欲しいですよね。 「まったく・・」と、思います。 でも、現場を見ている入居者の家族は、真面目な働きっぷりも、現場の大変さもちゃんと判っていると思いますよ。 だって、見えちゃいますもん!(笑)
シェフ業も、現在はお休中なんですよ。 食いしん坊なので食べ物の話題が多いですし、作ってみて美味しかったもののレシピも、不定期にアップしています。 いろいろな仕事をしてきましたし、今でも形に囚われないような生き方をしていますので、自分が何屋なのか判らなくなりますが、まあ良く言えば「なんでもそこそここなせるヤツ」ということで、ご勘弁ください。

また記事を読みに伺わせていただきます。 今後ともどうぞよろしくお願いします。

投稿: リーボー | 2006.08.13 20:10

こんにちは。
実はこの事件、すごく興味がある事件なんです。
誤解を恐れずに書かせてください。
最初に新聞で読んだときの感想は「気持ち悪い」でした。2チャンネルを見ているときのような気持ち悪さを感じたんです。
この事件ってこの社会に住む人間として絶対許されない事だと思うんですね。社会や業界のせいではなく当事者の問題だと思うんです。当事者の倫理観の問題です。忙しいかもしれないし大変かもしれない。でもそんな言い訳は成り立ちません。仕事ですしね。嫌ならやめたらいい。
そして施設には職業倫理を教育する義務があります。そういう意味で責任があります。
この事件はレイプと同じだとおもいます。死刑でもいい。
オイラはこの事件にとっても怒ってます。

ちょっと生意気にかいちゃいましたが…。
すみません。。

投稿: クッスィ~ | 2006.08.14 17:44

クッスィ~さん、こんばんは。
そうですね、一言で言えばプロ意識の欠如だと思います。 職業倫理の欠如以外の何物でもない、と、私も思います。
ただ、現実問題として、職場で先輩と呼ばれるそこそこの経験を積んだ人でも、倫理観を身に付けていなかったり(今回の事件のように、ですね)、「見て覚えろ!」と言っておけば済んだ時代は終わっていて、手取り足取り教えてもらう受身の姿勢に慣れきってしまっている人達が社会の大半を占めていることも、考慮しなくてはいけないと思うんですね。 その人達にどうやってアプローチするかという事は、職場の組織がしっかり考えてゆく必要があると思いますし、責任があるでしょうね。 そこの部分を組織は見据えていないといけない・・。 で、先手を打っての教育が必要になるわけです。 リスクの回避として、です。
これから調べが進んで明確化してくることを期待しますが、今回の事件で問題を起こした本人たちや施設管理者が、どれだけ「これはいけないことだと理解しているか」が、ひとつのポイントだという気がします。 それすら自覚がない、若しくは、理解していても歯止めが利かないのが、社会の現実でしょう・・これだけモラルがなくなってしまった世の中です。 自分に何かのハードルを課したり、自分に対して厳しい姿勢で臨むことに、価値を置かなくなっているような気がします。 すぐにストレスだと言って回避しますから(苦笑)。
私の知っている限りでは、老人施設においての職員教育はお粗末です。 もちろんちゃんとやっているところもあるでしょうが、まだまだ医療従事者や教職者に比べれば甘い感じが否めません。 で、医療従事者や教育者だってこれだけ倫理上の問題を起こすのです。 ですから、推して知るべし、ですよね。 すぐにで着手してほしいものですが。

生意気ですか? 全くそうは思いません、です。 自分の意見や考えを持つことは大事でしょう。 ネット上では誹謗中傷が渦巻いているのも事実ですが、それぞれが自分の考えに基づいて書き込むこと、そして、揚げ足を取らずに話しの本質をつかむことが、最も大切なのではないかと、私は考えています。 今後も生意気な書き込みを??お待ちしています!

投稿: リーボー | 2006.08.14 20:10

リーボー様
コメント有難う御座いました。自分は介護の資格を持っておりますが、仕事は介護織ではありません。ただ医療関係者、ドクターなどの知り合いというか、その方面に多少なり関わる仕事をしておりますのでこの記事は、資格取得時に感じた事で、自分なりに多くの矛盾と葛藤の整理がつかない中、投稿いたしました。ドクターのモラル、自分が仕事上知りえた在宅医療等、特にドクターの表と裏に焦点や、現在の警察の事等客観的に随時更新していきたいと思いますのでご覧頂ければ幸いです。といっても日常の趣味も随時更新いたしますので、この医療や介護等と話題が大きくずれる事がありますので、何卒ご了解いただけますよう御願い致します。コメント有難う御座いました。反対のご意見でも大歓迎ですのでまたご覧いただけますよう御願い致します。

投稿: ZERO | 2006.08.17 00:58

ZEROさん、いらっしゃいませ。
医師の裏と表ですか・・私も元医療従事者でしたから、自分にも裏と表があったような気がします。 全てのサービス業は裏と表のギャップの上に成り立っているんじゃないか、と、最近は感じるようになっていますが。
またお邪魔に伺いますね。

投稿: リーボー | 2006.08.17 19:52

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