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2006.08.03

暑い日のココア

お亡くなりになった元帝国ホテルの料理長村上信夫氏が、インタビューの中で述べていた言葉で、何故かずっと印象に残っていたものがある。 それは「ココアは夏の飲み物です」というもの。 フランスに料理留学していた際のホームステイ先のお宅では、夏の間食卓の中央にいつもショコラティエールがあって、子供も大人も水や牛乳で割って好きに飲んでいたということだった。 ショコラティエールの画像を貼り付けようと検索してみたが、良いものが見つからなかったので書いておくと、陶器製の高さ30センチ近い円筒形のポットのようなもので、蓋の中央にピンポン球くらいの穴が開けてある。 その穴から木の棒を差し込んで中身をかき混ぜるような仕組みになっている。 ココアパウダーと砂糖を少な目の湯で練り混ぜたものを、このショコラティエールの中に入れておく。 放っておくとココアパウダーが沈殿してしまうから、飲む時に各々がかき混ぜてからカップに移し、牛乳などでさらに割っていただく、というための道具だ。 現在では転化して、女性のチョコレート菓子職人のことを指すことも多い。

日本ではココアといえば冬の飲み物で、冷えた体を温める優しい飲み物のイメージが強いから、村上氏の言葉がとても不思議に聞こえたのを覚えていた。 それで、いつか機会があったら試してみようと思っていたのに、夏本番になるとすっかり忘れてしまい、肌寒い季節になると「あっ、この夏も作り忘れていた!」なんて思い出すのだ。 ところが、今年は不順な気候のお陰で、数日前まで珍しいほどに涼しい日が続き、ココアの存在を思い出すことができたので、それっ!とばかりに作ってみた。

さすがに暑いココアをふうふう飲む勇気や気力には自信がなかったので、濃い目のアイスココアだ。 ココアパウダーも砂糖もしっかり入れて、じっくり練って牛乳で割る。 全体にとろっとするくらいに濃く仕上げてから、氷をたっぷりのグラスに注いで、キンキンに冷やす。 それを少しずつ味わうようにゆっくりと飲んだ。

以外にも、ココアの濃さがじっくりと体の奥に染み込んでゆくようで、非常に大人向きのオヤツといった印象。 早くも暑さ負けしかかっている体のだるさが抜けてゆくようだった。 お茶のようなさらさらの飲み物ばかり飲んでいた中で、味も香りも濃いしっかりした存在感のココアは目新しくもあり、背筋がすっと伸びるような緊張感のある飲み物に感じられた。 敢えて表現するなら、真夏のお茶席で和服の帯をピッと締めてきちんと正座し、濃茶をいただく時のような気分。

十分甘いし味も濃いのでお菓子は無しにして、一杯でオヤツタイムが完結するような仕立てで。 量も多くせずデミタスカップくらいで、その代わりきっちりきっちり冷やして、ゆっくりいただくと良いと思う。 大人のおもてなしにはかえってお洒落かもしれない。

日本には濃茶、ヨーロッパではココア・・根底に流れている文化に共通項を見つけたみたいで楽しかった。 夏バテしそうな暑い午後にオススメしたい。 村上氏の宿題ををやっとひとつ片付けできたような気分にも、なんとなく満足。

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コメント

いいですね。夏のココア。飲んだことはないですが…。かなりオシャレな印象ですね。ちょっと真似してみます。
先日書いてあった大葉ごはん。大葉がなかったので変わりに水菜を入れて作ってみたんですね。それはそれで美味しかったですよ。大葉ごはんとはまったく違う物になってしまいましたが…。

投稿: クッスィ~ | 2006.08.06 14:22

クッスィ~さん、こんにちは。
水菜ですか。 それはやったことがありませんでした。 水菜って生のままで使うと、結構存在感があるので、カロリーオフになって良いかもしれませんね。 そのうち試してみます。

ココアは缶入りと自分で作るのでは大違いですから、ちょっと面倒でもパウダーを練って作ってみてくださいね。

投稿: リーボー | 2006.08.06 16:34

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