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2006.08.09

隙 その2

外食すると大抵テーブルの上にちょっとした調味料が置いてある。 塩・胡椒のセット、中華料理店ならラー油や醤油・お酢も、とんかつ屋さんならソースやからし、といった調子。 料理人なら必ず「この味で食べて欲しい」と考える『勘所』みたいなものがピンポイントで存在するはずで、まさにそれをお客に出したいはずだから、厳密に言えば卓上調味料なんて置きたくはない。 自分が思うようにソースもラー油もかけてしまって、完成したお皿を出せれば一番だ。 だが、お客にも好みがいろいろあって、たっぷりソースをかけたい人、ソースじゃなくて醤油で食べたい人、思いっきり辛くしないと気が済まない人、塩味が濃くないと満足できない人などなど、それら一々に対応している訳にもゆかないし、面倒だし・・で、「じゃあ、後はお好きなようにいじってください」と、丸投げにする。 つまりは完全な形に完成させるよりも、わざと隙を作って客に自由を与えることで、相手の満足度を高めていることになる。 それが証拠に、比較的完成度を重視する懐石料理やドレスコードを設定するようなフランス料理店では、卓上調味料を見ないことの方が多い。

隙を作る場合には、誰にでも判るような目立つ形で、「ここです、ここ!」のようにすることがポイントだ。 すると相手は間違いなくそこからいじりだす。 いじることでイニシアティブを自分が握っているような気になって、うれしくなるし満足する。 しかし、その隙を設定したのは提供する側だから、いじられることも充分想定内なわけで、その対応も計算済みだから、掌で遊ばせているようなものだ。 他の部分をいじられないように、わざと目立つような隙を作っていると言っても良いかもしれない。

完成度の高いものは、商品もサービスも作品も、全て相手を選ぶ。 万人に解ってもらえなくても良いから、一握りの熱心なファンが居てくれれば良い、と、開き直ることが求められる。 熱心なファンは高いお金を払っても手に入れようとしてくれるから、それはそれで上手くゆけば採算に合うだろう。 片や、万人受けしてもらうためには隙を作っておくほうが手っ取り早い。 良い気持ちで満足感を得られれば、多くの人が賛同してくれるだろう。 薄利多売が成り立てば It will be all right!

隙は計算の上で使いこなすことが大事なんだろう、多分。 Bank Bandが「to U」に目立つ隙を作らなかったのは、「解る人達に解ってもらえれば良い」という姿勢の表れなのかもしれない。 元々環境問題は日常と切り離せないことだから、その線引きの基準は一人一人大きく違っている性質を持つ。 それをひっくるめて厳密な基準作りをしたら、離れてしまう人達がたくさん出てくるという危うさと紙一重だ。 何かを感じてできることから・・という曖昧さこそが、既に大きな隙であることを思えば、わざわざ作品に隙を作る必要もなかったのかもしれない。

買い物のついでに寄った昼時の定食屋さんで、卓上の塩・胡椒を眺めつつ、そんなことを考えていた。 

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