« そんな単純な問題ではないと思う | トップページ | 癖若しくは習慣 »

2006.08.14

そこにある事実

物干し場の地面にはコンクリートが張ってある。 朝から日がさんさんと照りつけるその場所に、いつものカナヘビが日向ぼっこをしていた。 夏の初めよりひと回りもふた回りも大きくなっているところを見ると、そこそこ栄養状態も良いのだろう。 まん丸な目を眠たそうにぼんやりさせながら、シシャモのようなお腹をぴったりとコンクリートに押し付けている。

こんな暑いところで熱せられたコンクリートにお腹を押し付けて、干からびないんだろうか? こっちは早々に洗濯物を干し上げ、とっとと部屋の中に戻ろうとしているのに、カナヘビは夏の日差しを楽しんでいるかのようで、一向に動じない。 いくら爬虫類が変温動物だからといって、これほど体を熱くしなくても良いだろうに。

「そうか、爬虫類は熱帯地域に繁栄しているくらいだから、この程度の暑さではもの足りないのかもしれないな。」、なんて考えながら洗濯物を干しつつ、「ん?」。

「人間だって北極や南極圏で暮らす人もいれば、赤道直下で暮らす人もいるし、肌の色も様々だし、でも同じ人類だよなあ。」
「それに、同じ人間で同じ国に住んでいても、寒がりの人も、暑がりの人もいるよな。」
そこまで考えたら、さっきの「爬虫類だから・・」は、ずいぶんいい加減な考え方のように思えて、反省した。 このカナヘビがどんな嗜好を持って、何を考えて日に当たっているのかは、そんなステレオタイプの考えでは片付けられない。 それを決め付けて考えた私が、急に恥ずかしく思えた。

「大変失礼しました」、と、心の中で言いながら、カナヘビに振り向くと、口元からバッタの足をはみ出させて、必死に飲み込んでいる最中!

とにかく「そこにそうしていることは、このカナヘビにとって『快』である」、という事実だけが存在していた。

なんだかそれだけで必要充分条件を完璧に満たしている、と、思った。 あっぱれという気持ちに近い、ある種の潔さが私にも快感だった。

|

« そんな単純な問題ではないと思う | トップページ | 癖若しくは習慣 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: そこにある事実:

« そんな単純な問題ではないと思う | トップページ | 癖若しくは習慣 »