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2006.08.29

お祓い その2

(昨日からの続きです。 初めての方は昨日分からお読みください。)

修道女という種類の方達は、年を取ってもどこか天真爛漫と言うか少女のような雰囲気があるのは不思議だ。 私のへんてこな質問にも屈託なく答えてくれる。
「実は私も困っちゃってね、神父様に相談したのよ、『どうしたらいいでしょう?』って。 そうしたら、『お化けって何ですか?』なんて逆に聞かれて答えに困ったわ。 ははは。 そうしたら横に居た別のシスターが『神父様、ゾンビみたいなもんです。』って。 私は、ちょっと違うなあって思ったんだけど、他に表現が思いつかないし。 困っていたら神父様が『じゃあもっと神聖な場所にするようにしてあげたらいいですか?』って言ってくれたんで、こうなったのよ。」
つまり、ますますキリスト教的な神様の愛でその場所を満たしてしまえば、その他の邪悪なものは入る隙間がなくなる、ということらしい。

「賛美歌を歌うために呼ばれたのは解りましたけれど、なんで他の病棟の私らが?」
「それはホラ!見たことのない顔の人が参加してくれていると、ありがたみが増すじゃない。 いつも同じ顔の見慣れたスタッフばっかりよりも『こんなにやってくれている』って思うでしょ? それはそうと、あなたたちなんにも知らされないでここへ来たみたいだったわね。」
「そうですよ、ウチのシスターは何にも言ってくれなかったんですもん! でも、こういうことだったら、私たちよりも被り物(修道院によっても違うが、修道女は普段からベールを身に付けている人が多い。)している人が参加していたほうが、ビジュアル効果が高くて、良かったんじゃないですか?」
「おたくらの師長に頼んでおいたのよ、来てねって。 そしたら急に『会議が抜けられない』って言うじゃない、それで困って、『じゃあ誰か代わりによこして頂戴』ということになったわけ。」

持ち場の病棟に帰る途中で、私と後輩は話していた。 例えば仏教徒のお化けにも聖水は有効なのだろうか?とか、なんだかしっくりこない気持ちで。 でも、「お祓い」に参加してきたなんて喋ったら、ウチの病棟にも変な噂が広まって厄介なことになりかねない予感がするので、内緒にしておこうということになった。 元々女性の職場には詮索好きの人も多くて、デマや迷信がはびこり易い。

病棟に戻ると、会議を終えた師長が帰っていた。 私の顔を見るなり、腕を捕まえて人気のない隅に引っ張って、「どうだった?」と尋ねてきた。
「どうだったもなにもないですよ。 『お祓い』だってひとこと伝えてくれないと、こっちだって気持ちの準備ってものがあるじゃないですか?!」
「ごめんごめん。 で、どんなことやってた?」
「普通の土地とか建物の祝別(まあキリスト教的な『お清め』みたいなものですか。)の儀式と一緒でしたよ。 神父様に御聖水撒いていただいて、みんなでお祈りして・・。」
「あなた、見たの?」
「そりゃあみんなで並んで行進しましたもん。」
「そうじゃないわよ、そうじゃなくて。 (急に小声で)お化けのことよ。」
「はあ??」
「お化け、いたの?」
「あのね、シスター、いくらお化けだってこんな真昼間の面会時間で人が一杯の時間に出るわけないでしょう!」
「あ、そうね。 それならいいんだけど。 まあとにかく、どうもありがとう。」
「一応○○(後輩の名前)には、他言しないように釘刺しておきましたけど、シスターからも彼女にお礼言ってあげてくださいね。」
「そうね、そうするわ。」
なんだか、私は頭を抱えたのを覚えている。 と、同時に、「ははーん、そういうことか」と、ピンときた。

後日、私の関係するプロジェクトの会議で、『お祓い』をした病棟の師長シスターと会った。 あれから全く出ていないらしい。 変な噂も収まって一安心だという話だった。 やっぱり効いたのだろうか? とりあえず良かったですね、などと話しながら、実は気になっていたことを、こっそり耳元で聞いてみた。
「ウチのシスター、怖がってわざと私たちに行かせたのと違いますか?」
「やっぱり、あなたもそう思う? 私も同じことを思っていたのよ。」
「どうだった、なんて質問攻めで、まるで怖いもの見たさでしたよ。」
「あの人、気が小さいトコあるからね。」
くすくすと笑ってしまった。 病棟で師長は大きなくしゃみをしていたに違いない。 上の立場の人は、あんまり完璧にでき過ぎていないほうが、下の人の力を引き出せるものなのかも・・。 まんまとはめられた自分が可笑しかった。

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