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2006.10.08

プライド

テレビ東京の「田舎に泊まろう!」という番組に、鈴木康博さんが出演すると知ってから、ずっと心の中は乱れまくっていた。 この番組は、出演者が見ず知らずの地方都市へ当てもなく出かけていって、そこで知り合った方のお宅に民泊をお願いし、お礼に家業を手伝ったり自分に出来ることをしながら交流を深める、という、旅番組プラス小さなドキュメンタリーといった番組らしい。

実はあまりちゃんと見たことはないのだが、宿泊先となるホスト・ファミリーと成るべく一般市民を交渉して、「今夜泊めてください」といきなりお願いする時には、必ず「自分が誰であるか」を相手に明確に示す必要があるわけで、例えば役者さんだったら代表作を言ってみたり、自分の経歴の中から世間の認知度の高そうなものを相手に提示して、「アー、あの人ですか。」と思わせる素材が必要になるようだった。

鈴木康博さんはミュージシャンだ。 ギタリストともいえるし、コンポーザーでもある。 そして、あのOFF COURSEを小田和正さんとともに構成した中心的人物でもある。 本当のところは良く知らないけれど、一応、小田さんばかりにスポットライトが浴びせられ続けたことを、鈴木さんのプライドが許さなかったことで、鈴木さんがオフコースから脱退し、やがてはバンド解散に繋がったとされている。 まあ、みんな若かったし、高度成長期に乗っかって社会も大きく動いていた時代だったから、それこそ「いろいろ」あったのだと思う。 とにかく本当のところは、本人たちにしか解らないということだけは、確かなんだろう。

で、鈴木康博さんが「田舎に泊まろう!」に出演するということは、つまり、「元オフコースの鈴木です」とか自分で説明しなくてはいけない状況が必ずVTRに収められるわけで、多分、鈴木さんは「いかに自分を知らない人々がたくさん存在しているか」とか「知名度が高くないか」などの困難を乗り越えて、宿泊先を探さなくてはならない。 プライドをずたずたにされて、単なる独りの等身大の人間として、初対面の相手と交渉しなくてはならないわけだ。

私はこの番組を見るべきか見ないでおくべきか、心底迷った。 小田和正さんが出演するのだったら(絶対に出演しないと思うけれど・・)、多分迷わず見たと思う。 小田さんがプライドを捨てて勝負している姿は、毎年年末にTBSが放映してくれていたから、徐々に見慣れるような感覚があったし、自分の小田さんへの思い入れ(?)を考えれば、ある意味、全てを受け入れられるような錯覚も持ち合わせていて、カッコ悪い小田さんを見てもそれを受け入れられるだけの度量がある、と自分で判断できるのだ。

しかし、鈴木さんとなると微妙で、思い入れも小田さんに対してに比べれば弱いし、プライド云々でオフコースを去った人が、今更プライドをかなぐり捨てる様子も、正直言って見たくはないし、出来れば強がりであったとしても、プライド高いままで貫いて欲しいと思っている。 そんなことはないのだろうが、ついつい、「YASSさん、お金に困ってるのかなあ」とか、「そうまでして仕事が欲しいのかな」とか、本当に憶測のまま余計なことを考えてしまうのだ。(非常に失礼なことなのに。)

ずっと考えて、さんざんに迷った挙句、結局テレビは見ないことにした。 多分、プライドを捨てられなかったのは、鈴木康博さんではなくて、私なのだ。 彼にプライド高いままで居て欲しいというエゴを、断ち切ることができなかったんだと思う。 私は、鈴木さんの弱い顔を見たくなかったし、それを受け入れるだけの度量を持ち合わせていないのだ。 そんなことに気がついたら、無性に哀しかった。 なんだかため息が続いた。

たかが一本のテレビ番組で、こんなにも心をかき乱されたのは、初めてだった気がする。 オン・エアーはついさっき終わったばかりのはず。 オフコースのファンだった人達がどんな想いでこの番組を見ていたのか、後で検索して覗いてみたい。

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コメント

TBありやとね。

オイラはヤスさんが出演することは知らなかった。
ザッピングしてたら、不幸にも遭遇したのだ・・・。
元オフコースと名乗らねばならない状況は、見た瞬間に覚悟できた。

しかし、それよりも出演したこと自体に疑問と情けなさがあった。
そして、最後に民泊した家の家族に向けて即興の唄を・・・。
それが切なかった。
こんな番組でしかアーティスト鈴木康博をアピールできないのかと。

しかも番組中流れたのはオフコース時代の曲だがいずれも小田ボーカル。
テレ東も小田でないとアピールできないと踏んだのかと思うと更に・・・。

投稿: Ryoma | 2006.10.08 21:44

Ryomaさん、いらっしゃいませ。
・・そうでしたか。
出演に当たり、どんな背景があったかは判らないにしても、ご本人も実際の番組がどんな感じになるかは、うすうす想像ついたでしょうにね。

私も見てしまっていたら、今よりもっと悶々としていたかもしれないな。ある意味、見なくて正解だったかも?!

あんまり「鈴木康博」という存在を安売りして欲しくはないですね。

投稿: リーボー | 2006.10.08 22:47

トラックバックありがとうございました。
ヤスさんの出演を知ってだいぶ葛藤されたようですね。(^^;)
僕はテレビをつけたらたまたまヤスさんが出ていた感じなので見入ってしまいましたが・・・・・。確かに考えれば考えるほど、普通の気持ちでは見られないかもしれないですね。あんな役と分かっていながら引き受けるくらい仕事がなかったのか・・・、あるいは心境に変化があったのか。複雑な思いは残りますね。

投稿: 198263 | 2006.10.09 12:30

198263さん、コメントをありがとうございます。
久しぶりにかなり葛藤しましたです、はい。(苦笑)
なんか後味が悪くて。いろいろな方のブログにお邪魔して読ませていただいたのですけれど、やっぱり、手放しで好意的に書いている方は、今のところ多くないみたいですね。皆さん同じように複雑な思いを抱えていらっしゃるみたいで。

投稿: リーボー | 2006.10.09 13:17

皆さんの心境はよく理解できます。
誰の人生にも浮き沈みがあり、年を重ねて解る事や、出来る事、出来ない事が出てきますよね?
皆さんは鈴木さんが大好きですよね?
お元気な「やっさん」がTVで観れてよかった。
ずっとお元気でまた、元気な姿を見せて
下さい。・・・・と応援しましょう。

投稿: 米子のTOM | 2006.10.18 01:07

米子のTOMさん、いらっしゃいませ。
私はなかなかTOMさんのようには思えなかったんですね、多分今でも。 で、それはどうしてなんだろうと考えたのが、本文を書くきっかけでした
もちろん人それぞれにいろいろな捉え方があり、もっと言ってしまえば、良かろうが不評だろうがとにかく世間的に話題になること、が、出演の目的だったのかもしれませんし、ファンなんてどうせ外側からとやかく騒いでいるだけの存在ですから、自分で書くのも妙ですが、いい加減な存在以外の何者でもないと思います。 でも、『こうあって欲しい』という希望はみんなそれぞれ鈴木康博さんに対して抱いているでしょうし、テレビを見て新たに抱いた方もたくさんおられると思うので、その浅い部分だけで「そうだよね」とか「違うよね」とか言い合っているのだと思います。
もちろん元気で活躍していただきたいのは当然ですが、多分、もっと上乗せした部分を私は鈴木康博というコンポーザーに期待しているのだと思います。 だから、多くを求めてしまって、その結果、あの番組を受け入れられなかったんでしょうね。

YASSさんの話題はあまり登場しないかもしれませんが、また気軽においでください。 お待ちしています。

投稿: リーボー | 2006.10.18 17:19

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