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2007.01.26

高眼圧症への訣別 その1

実は1月25日は、私にとって記念すべき日となった。 それは、ひとつ持病が消えた日であり、20年近く余儀なくされた2種類・一日3回の点眼薬から開放された日でもあったのである。

下されていた診断名は『高眼圧症』という。 とっても簡単に言えば、目玉の圧力が上がってしまう病気だ。 目玉の中には『房水(ぼうすい)』と呼ばれる涙のような水がゆっくりと流れていて、瞳の外へ排出されてゆく。 何らかの理由で房水の生成が促進されたり、排出が上手くいかなくなったりすると、房水が溜まって水ヨーヨーがパンパンに膨らむように目玉の内圧が上昇する、これが『高眼圧』。 高眼圧の状態が長く続くと、水ヨーヨーの壁のウィークポイントがダメージを受け始める。 目玉の場合、このウィークポイントは、奥のやや下にある『視神経乳頭』と呼ばれる、文字通り視神経の束の出入り口だ。 その結果、視野が欠けたり、物が見えにくくなったりするのだが、こうなると俗に『緑内障』と呼ばれるようになる。 つまり『高眼圧症』は『緑内障』の前段階と考えて、『緑内障』に移行しないように眼圧をコントロールするのが常套的な医療とされている。(最近では『正常眼圧緑内障』といって、眼圧が高くないにも係わらず、『緑内障』の症状が出る患者さんもたくさん存在することが判り、大きな問題となっているのだが。)

で、眼圧を測定する時は、目玉のいちばん外側、つまり『角膜』と呼ばれる、虹彩(目の茶色いところですな)の外側をドーム状に覆っている膜(コンタクトレンズが乗っかる部分とも言える)で測定する。 そこにピンポイント的に風を当てたり、角膜の表面に直接端子を当てて、どのくらいの力で膜が凹むか、を計ることになる。

前置きが長くなって申し訳ないが、私は20代のある夜、ふきんの消毒をしようとしてキッチンハイターという塩素系漂白剤の飛沫を眼に入れてしまった。 救急外来を受診し10日ほどの処置で事なきを得たのだが、その際に「ハイターのダメージは完治したけれど、それとは別に、眼圧が高いから近医でしっかり診て貰う必要がある」との指摘を受けたのである。 『視神経乳頭』に異常も無いし、視野も欠けてはいないが、高い眼圧を放って置く訳にはゆかない・・とのことで、眼圧を下げる点眼薬を使うことになった。 それ以来のお付き合い、つまり、かれこれ20年近く点眼薬をさし続けて来た訳だ。 点眼薬を使い切った時に受診して、『視神経乳頭』の状態をチェックしながら、年に二回ほど視野の詳しい検査を受ける、その繰り返し。 眼圧を下げる薬も様々で、自分に合う薬が見つかるまでは試行錯誤だし、新しく点眼回数が少ない薬が認可されたとあれば試してみたり・・と、長い道のりだった。 しかも、一回の受診で保険適応でも5000円近く必要だし、待ち時間も含めると結局一日がかりに近い。 それでも目が見えなくなることは避けたい一心で、真面目な患者だったと思う。 これが一生続くのかと思うと、仕方が無いとは言え、正直面倒くさかったし憂鬱に思う時もあったのは事実だ。

ところが、である。
『レーシック』という名前を聞いたことがおありだろうか? 「近視を手術で治す」と書けば、ピンと来る方も居られるだろう。 アメリカであっという間に広まり、日本でも始まりつつある治療だ。 まだ安全性が確立されていないという理由で、保険の適応にはなっていない。(30万円近くかかるらしいが。) 実はこれは、近視の状態に応じて『角膜』を薄くレーザーで削り、レンズの屈折率を変えることで近視を矯正するという手術なのだ。 よってその患者の『角膜』がどのくらいの厚みで、どのくらい削れば良いのか、事前に正確に調べる必要がある。 そのための検査機械が開発され、レーシック手術の普及と同時に検査機械も改良研究され、値段も下がり、使いやすく安全になっていった。 当然ながら、たくさんの患者のデーターが学会などで集積されてゆく。 すると、今まで考えられていたよりも『角膜』の厚みには、個人差が大きいことがわかってきた。

標準的には0.5mm.とされていた角膜が、実は薄い人もいれば厚い人もいる、となったわけである。 つまり薄いゴム製の水ヨーヨーもあれば、タイヤのような分厚い水ヨーヨーも存在することが判ってきた。 となると、『角膜』が凹む圧力で測定していた眼圧も、その厚みによって測定値に大きな差が生ずることになる。 薄いゴム製の水ヨーヨーは指で押せばすぐに凹むが、タイヤのような水ヨーヨーを凹ませようとしたら大変な力が要るのと同じ。 なので、測定された眼圧の数値を、『角膜の厚さ』に応じて修正しなくてはいけない。

実は『高眼圧症』の診断の元、治療を受けている人の中には、この『角膜』の分厚いタイプの人がかなり含まれていることがわかってきたらしい。 実はその人達は「見かけ上、眼圧の検査結果が高い圧力に測定されているだけで、本当の眼圧は高くない」ので、当然治療も必要がなくなる。 もちろんその判別には慎重な検査や経過観察が必要ではあるが。

つづきます。)

目の構造その他は、こちらのサイトによくまとめられています。 興味のある方はどうぞ。 

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