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2007.01.10

頭の中の美味しさ

義父はこのところ、施設で提供される食事の不満を、よく口にする。 「不味くて全然食べられないんだよな」と、こぼす。 しかし、実際に毎食どのくらい摂取されているかは、ひとりずつ細かく記録がつけられていて、介護に当たってくださっている方々によれば、「パクパクと8割方の量は、ちゃんと召し上がっておられますよ。」だそうだ。 「なんだか、本人が食べられないとこぼしているものですから・・。」と伝えたら、すごくビックリされた。 とてもそんな風には見えない、ということらしい。 施設での食事光景を実際に毎回見ているわけではないから、客観的なことは判らないにしても、少なくとも義父が言うように「全然」などということは無い様だ。 痩せてきた訳でもないし。 提供されれば、文句を言いつつもそれなりに食べられる、ということなのだろう。

多分、頭の中で考えている美味しさと、実際の味覚との間にギャップがあるのかもしれない、と睨んでいる。 少し前、急にあれが食べたい・これが食べたい、と言いだして、フランスパン、コーヒー、あんパン、乳酸菌飲料、などなどリクエストに応えて食べさせたのだが、どれもこれも実際は一度きりで「もういいや」になってしまった。 口に入れて味わってみたら「こんなはずじゃなかった」とか「もっと美味しいと思ったのに、大したことがない」とか、そんな状況なのかも・・と、義父を見ていて思う。 加老による味覚の衰えかもしれないし、脳の衰え、脳内の疾患、消化機能の低下、それに、もしかしたら全然違う分野の何らかのストレスがそうさせている可能性だってある。 総合的な問題だとしたら、本人自身にも、周囲の私たちにも、原因を特定できる部類のものではないだろう。 ただ、体の自由を奪われた上に、食べる楽しみも十分に満喫できないとしたら、切ないなあ、と、思うことしか出来ない。

私自身が、食べることを楽しみにしている部類の人間なので、余計に切ない気持ちになる。 とりあえず、食べてみたいと思ったものがあれば、端から用意してあげて試している、そんな感じだ。 彼にとって「本当においしいもの」が、何か見つかると良いのだけれど。

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コメント

頭の中の美味しさというタイトルで思ったのですが、私はよく料理雑誌をみていて、味を想像するのです。(というよりたいてい想像している)

美味しそうだなぁと思えば、作るのですが、これが曲者で、レシピどおりに作っては絶対にいけないのです。書いてある通りに作ると、想像した味にならなくて、「思ったほどじゃなかった」と後悔するので、作り方を参考にして自分が想像した味に向かって調理をすることになります。

成功することもあるし失敗することもありますが、少なくともレシピどおりよりは好みの味にはなるのです。

外食はたいてい、なにかしら好みから遠く感じることもあるので、もしかしたら家庭の味みたいな記憶にお義理父様がしばられているのかもしれませんね。

#まあ、唾液が減って味覚が弱っているのかもしれませんが。

投稿: kumi | 2007.01.12 02:44

お義理父さまの詳細の状態がわからないので何とも言えませんが、「味」ってりーぼーさんが言うように舌で感じるものだけではないんですよね。最近芸能人が目隠しして鼻をつまんだ状態で口に食べ物を放り込んで「これなあに?」とやるゲームがありますよね。あれからもわかるように「味」って舌だけでなく「視覚」も必要だし「嗅覚」も必要なんですよね。もしかしたらお義理父さまは「嗅覚」はどうなのでしょう?食される前に「におい」も嗅いで頂くと味の感覚が甦ってくるかも・・・。余計なお節介でご免なさい。

投稿: 横浜に昔勤めていました | 2007.01.12 12:55

>kumiさん、コメントありがとうございます。
義父が食べたがるのは、家で食べ慣れていたおかず系のものや、手作り系のお菓子ではないものばかりで、家にいるときから『お店で買ってきて用意していたもの』ばかりなのが、不思議といえば不思議です。 幼少時代に食べたであろう『懐かしい味』を探している様子ではないみたいですね。(その類の食べ物ならば、私にも打つ手があるんですが。) 人生の記憶の中の、限定されたピリオドの内容が、色濃く蘇っているのかもしれません。

ちなみに病気をしてから会話中もよだれが流れてくるくらいに、口の中は潤っているみたいなので、そちらの心配は考えていなかったのですが、食事中だけ唾液分泌が落ちるなんてこともあるのかなぁ? ・・今意識してよく見てみますね。

他の方のレシピは基本的に『その人の味』なので、『自分の味』とは違うことが多いですね。 でも、それもまた面白かったりしてね! 「えっ?こんな濃い味の煮物たべてるんだ?!」とか、「こんなに甘くしちゃうの?!」とか・・結構面白がってやってみたりしてます。 で、2回目に思いっきり自分のやりたいようにアレンジし直して、それでも好みに合わなかったら、レシピごとボツ。 PCはすぐに情報をゴミ箱に移動できるので、そういった面では便利ですね。(冷たい女だ、わたし・・苦笑)

>「横浜に昔勤めていました」さん、ご心配いただいてありがとうございます。
嗅覚も大事なんですね。 私も花粉症のシーズンは何を食べているのか判らなくなります。 昔から鼻系があまり強くない人だったらしく、私がお嫁に来た段階から、義父はあまり匂いに敏感とは言えなかったように思います。 嚥下力強化訓練の一環で、胡椒やワサビの匂いを嗅がせてから食事するというのも、病院で試してくださったのですが、「効果があまり無かったので止めました」、と、看護師さんから報告を受けたりして。 ・・時期が変わると効果も変わるかも知れないので、もう一度試してみようかな。

美味しさって本当に総合的なものであると同時に、嗜好はピンポイント的で、対応が難しいです。 余計なお節介などと仰らずに、私が忘れていそうな観点があったら、またヒントをください。 お願いします。

投稿: リーボー | 2007.01.12 16:06

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