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2007.04.01

わらび・ぜんまい摘み

4月。 カレンダーをべりっと一枚剥がす硬い音が静かな部屋に響いて新鮮だ。

雨の隙間を見つけて『わらび・ぜんまい摘み』に。 毎年山桜がぱらぱらと花をつける頃(山桜はもえぎ色の葉を開きながら、てっぺん近くに疎らに花をつける。 植物として木と花の量のバランスが正しいような気がして、こちらはちっとも怖くない。)、雨上がりの暖かい日を選んで出かける。 と、いっても、家から歩いてほんの数100m.程度の土手の斜面だ。 雨水で土が緩んだところに、一斉ににょきにょきと頭をもたげる光景は、土の中でいつ表に出るか相談したかのようで面白い。

指先で軸を折る度、瑞々しいぷつりぷつりとした感覚が伝わる。 春の命を分けてもらうんだなあ、ありがたいなあ、と、神妙に感謝したい気持ちになる。 中腰の姿勢からふと背を伸ばすと、ウグイスが鳴いたり、蝶が目の前を横切っていったりして、妙な一体感。 多分目覚めたばかりのくまん蜂がコロコロの体つきで低空飛行していて、そのユーモラスな不器用さに思わず笑いかけた。 「自然を大切にしよう」なんて本当に傲慢な話だな、と、ふと思う。 自然を利用して生きさせていただいている、その謙虚さが大前提だろう。

自分たち家族が味見する程度の量だけを摘んで、あとは手を付けずに家に戻る。 山の中で暮らすようになってから自分が一番学んだことは、「足るを知る」という感覚なのではないかと思う。

お湯を沸かして重曹を少々。 ワラビもゼンマイも一度にざっと鍋に入れ、ひと煮立ちしたら火から下ろしてそのまんま放置。 摘んできたばかりのものは、アクや苦味もかなり薄いので、そのまま室温に冷めたら水洗いして、もう食べられる。

おひたしもいいし、油揚げと一緒に煮るのも捨てがたい。 せっかくだから美味しい一皿に仕立ててあげなければ、春にも山にも失礼だろう。 こういう素材からのプレッシャーを感じられるのは、料理を作る者として、とても嬉しくて名誉なことのような気がしている。  

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