« 急遽方向転換 | トップページ | 多分、範囲が広すぎる。 »

2007.05.01

温泉で欲について思う

昨夜は珍しく近所の「日帰り温泉施設」を利用した。 『ますたあ』が日曜大工で自宅の風呂場に手を入れてくれたので、目地を埋めるパテを乾燥させるために、風呂場が使えなくなったからである。 ご存知のように伊豆は温泉に恵まれた地域で、あちらこちらに温泉旅館や温泉施設が充実している。 実は居住地域毎に共同湯もあったりするし、何らかの用事で旅館さんへ顔を出せば、ご挨拶代わりに「時間があったら(うちの)風呂にでも入っていきなさいよ。」なんて声をかけていただけたりもして、ちゃんとお金を払って客として利用する日帰り温泉施設は、意外なことと思われるかも知れないが、めったに利用する機会がない。

出向いていった温泉施設も数年前にオープンしていたのに、いつも前を素通りで初めての利用だった。 ここは昔、日本中にその名を轟かせていたような立派な温泉ホテルがあった所で、それを経営していたのがあの「ホテルニュージャパン」の社長だった方という、いわく付きの温泉。(当時は館内にあった純金風呂、つまり湯船が純金で出来ていたらしい、で、バブリーでリッチな雰囲気を売りにしていたらしく、いまでも年配の方々はその純金風呂という響きで、ピンと来るものがあると聞く。) 温泉の権利が多数の債権者に渡っていたとかで、ずっと放置され続けていたらしいが、それを「御殿場高原ビール」で御馴染みの食品関連会社のボスが取りまとめ、日帰り温泉施設に作り変えた。 ゆくゆくは発展させてゆくつもりなのかも知れないが、今は食事処も宿泊場所も併設されておらず、本当に「温泉だけ」といった感じだ。 それでも湯量はふんだんに恵まれており、俗に言われるところの「源泉かけ流し」なので、ネットで読む分には、自称温泉通の方々にも評判が良くて、まあ何より。

出かけたのが夜になってからだったせいもあるだろう、湯船は貸切だった。 とにかく広い。 泳げるくらいに広い。(水深さえあったら泳いでいたかもしれない。 実際、体を下向きにして両腕で体重を支え、サンショウウオよろしく動き回っていた・・。 いい年のオバサンが、まったく。) しかもひとりきり。(いえ、ひとりきりだったから、そんなこともできたんですけどね。) 薄暗い浴場に古い建物、裏を流れる川のせせらぎと、源泉から引かれたという温泉が流れ込む音。 贅沢に思えたのは最初の10分ぐらいで、静かな土地にすっかり慣れたと思っていた私でも、寂しくなるような落ち着かないような感じになってきた。 不思議なもので、初めての場所の全体像が掴めてくると、動きのあるもの・変化するものに興味が移動する。 岩が積まれた間から源泉が勢いよく流れ込む場所の近くに寄って、水の動きを眺めていた。

考えてみれば、温泉はずっとこんな風に湧き出ていて、それを建物や施設で囲み、配管を施し、お金を生むものを作り上げる。 何らかの事情で立ち行かなくなると、その権利がお金を媒介して他人の手に渡り、また新しい施設に作り変えられる。 温泉を取り巻くものは、何度も何度も立て替えられ、作り直されてゆくが、温泉はずっとそのまま溢れ続けている。 人間なんて上っ面なものだな、と、思った。 利用しているだけ、活用しているだけ。 そこにお金という仮想の価値観を塗りつけて、今ではこんなに立派な経済を回している。 驚嘆と、溜息混じりの気持ちと、呆れる感覚が同時に押し寄せた。 自分だって、手のつけようも無いほどに、立派にその中の一員だ。

とうとうと流れ出る温泉を見ながら、その変わらない様子に、悠久の昔から温泉を身近に暮らしてきた日本の人々のことを思った。 火山国、地震国であることと引き換えに、こんなに素敵な自然からの贈り物を授かってきたことが、なんだか無性にありがたく感じられた。 沸いて出ている物はありがたく使わせていただいても、ばちは当たらないだろう。 ただ、今のようにわざわざ掘ったり、汲み上げたりしてまで、温泉でお金を稼ぐという姿勢には、ちょっとばかり抵抗を感じるのも事実だ。 欲に見切りをつけないから、しっぺ返しがいろいろあるんじゃないかと、どこかで思わずにはいられない。

お陰様で良いお湯で、のんびりさせてもらった。 施設が充実しているとか、近代的な清潔感を細部にまで求める方には向かないような気がするけれど、日本人としてのDNAに刻まれている、本来の「湯浴みする」という感覚を思い出させてもらった。

約束の60分という時間目一杯、欲を出して楽しんでしまったお陰で、昨夜は少し「湯あたり」してしまったみたいだ。 やっぱり突きつけられているのは、欲のコントロールという課題なのかと苦笑。

「百笑の湯別館 湯治場ほたる」のウェブ・サイトはこちら

|

« 急遽方向転換 | トップページ | 多分、範囲が広すぎる。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 温泉で欲について思う:

« 急遽方向転換 | トップページ | 多分、範囲が広すぎる。 »