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2007.10.30

口癖 その2

世間的にペンションは「アットホーム的な家族経営」というイメージと結びついている業態。 なので、お客さんの前にオーナー夫婦の幼い子供が出て行ったりしても、たいてい大目に見てもらえるものらしい。 メモリアが稼動していた10年以上の間で泊まりにいらしたお客様の中にも、オーナーの家族構成に興味がある方も多く、どんな家族がこの宿を切り盛りしているのか興味深々という質問をたくさんお受けしてきた。 不思議なもので、『ますたあ』と私が揃ってバーカウンターに居ると、お客様の女性(ご家族のママ、夫婦の奥さん、カップルの彼女などに当るわけだが。)が、大抵私に「お子さんは?」と質問をぶつけてくる。 その度に私は内心「オンナの敵はオンナなんだな」、と、思っていたものだ。

私たち夫婦には子供は居ない。 死産もしたし流産もしたのは事実だし、それなりに泣いたが、あまり「人為的な妊娠」を望まなかったのも、また事実だ。 自然に授かればそれに従い、自然に授からないなら、それはそれで受け入れるような、そんな気持ちだった。 ありがたいことに親戚の理解もあったし(本音の部分は判らないが。)、かつての私の職場がたまたま新生児を毎日40人ぐらい世話するセクションだったので、「子供との触れ合いは職場で満たされる」みたいな背景も影響したと思う。

普通こういう状況下で「お子さんは?」などと聞かれたら、神経を逆撫でされたような気分になるところだろうが、あまりに慣れっこになってしまったせいか、たいしたストレスも感じずに、普通に淡々と「子供は居ないんですよ」と、答えていた。 ただし、だ。 その後に必ず続けて言う。 「今のご質問、私は大丈夫ですけれど、他の方には気をつけてくださいね。」

私がそう言うと、大抵の質問者は何を指摘されているのか解らなくて、怪訝な顔を返してくる。 そこで、その質問は無意識に人を傷つける可能性があることを説明するのだった。 家族に恵まれた女性の多くは、それが当然の普通のことだと思っていて、「子供が居ないこと」で苦痛を覚えている同性には、かなり理解が薄いことを私は知った。 初対面の既婚女性に対して、話の取っ掛かりを掴む為に、口癖のようにその質問をしているし、してきたのだろう。

たまたま「40歳からのスタート」というブログで、こういった内容に触れられているのを読んで、いろいろなことを思い出していた。 そうなんだよな。 何気ない一言が人を傷つけることは、確かにある。 その言葉を使っている人に、その危険性の認識がないところが厄介なのだ。

きっと私に悪意もなく「お子さんは?」と尋ねて、お説教まがいの話をされた宿泊客の方々は、すっかり懲りて、もうその質問をむやみに誰かに投げかけることをしなくなったと思うけれど、相手を傷つけた認識がなかったら、いつまでもその質問を使っていることと思う。 尋ねられて気分が悪い質問を受けたら、そのことをしっかり相手に伝えた方が良いのではないか。 そうしないと、いつまで経っても終わりが来ない。 私だってどこかできっと、自分で気付かないうちに、誰かを傷つける質問をしたりしているに違いない。 相手が指摘してくれたら、「ごめんなさい」と、素直に謝れる自分でありたいと思う。

コミュニケーションは相互関係だ。 建設的で冷静ならば、いくらでも修正することができる。 必要以上に恐れる必要もないし、我慢して泣き寝入りする必要もない。 その場で黙っておきながら、別の場所で文句を言うのは嫌だ。 『誰でも使える道具』が凶器にならないように、活かしてゆけるように、注意深さを持って使ってゆきたい。

このブログにも書いているが、この夏、私は子宮を摘出した。 隠す必要もないし、全く負い目も背負っているつもりがないので、平気で公にしてしまっている。(その感覚自体が、ちょっとアブノーマルなんだと思うが。) 今度どこかで「お子さんは?」なんて尋ねられたら、さめざめと泣いて一芝居打って見せ、最後に「な~んてね!」とでも言って、相手をギャフンと言わせてみせようかな、と、いたずらっ子の血が騒いでいる。 子供を授からずに子宮摘出なんて、そんな芝居をするには充分過ぎる貫禄の経験だろう。 ・・あらヤダ、怖い怖い・・。 

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