« 相対的に | トップページ | お歳暮 »

2007.12.02

ゆっくり泣きましょうよ、ね。

義父宛てに一通の喪中葉書が届いた。 亡くなったのは、会社勤めをしていた当時の同期入社の仲間だった方で、若い頃は会社の家族旅行で『ますたあ』もお会いしたことがあるらしい。 お亡くなりになったことは知らなかったが、義父も「この体では行ってあげられないが、是非お悔やみを。」とのことで、代筆した手紙と一緒に少々のお金を包んで郵送したのが3日前のことだ。

お昼前に、亡くなった方の奥様から電話があり、偶然受話器を受けたのが私だった。 もちろん初対面。 名前を名乗られて、こちらも誰なのか名乗り、そんな感じでぎこちなく会話が始まる。 御仏前の御礼を丁寧に受けると、亡くなる前の様子などをあちらからお話してくださったのだが、途中から涙声で、喉が詰まってしまった様子。 一生懸命にお話しようとなさるのだが、途切れ途切れになってしまう。 「奥様、大丈夫です。 ゆっくり泣きましょうよ、ね。」なんて、私が言ってしまったのを合図にしたように、堰を切っておんおん泣き出してしまわれた。

5年近い闘病生活で、酸素ボンベを抱え、ほとんど寝たきりですごしていたこと。 子供たちが遠くに所帯を構えているので老夫婦ふたりだけの生活で、自分も体力的にもしんどかったこと。 もっともっとしてあげたいことがたくさんあったのに、出来なかったこと・・。 いろいろ聞かせてくださった。 「死んだのが7月の初めで、一番暑くて辛い時に、今年は私に楽をさせてくれたんですよ、主人は。 正直なところありがたかったです。 でも、やっぱり淋しいし、張り詰めていた気持ちが弛んでしまって。 私の生きがいまで無くなっちゃったみたいなんです。 おかしなもので。」

他人だから、しかも初対面の相手だから、言えたこともあったかも知れないし、逆に感情を吐き出せたのかもしれない。 さぞかし辛かったんだろう。 「ごめんなさい、鼻をかんできます。」と、短いインターバルがあってからは、随分すっきりした御様子で、「嫌ですね。 こんなこと無かったんですよ、お葬式でも、お骨拾いでも泣かなかったんですよ。 ごめんなさいねえ、本当に。 御礼の電話がさんざんになってしまいました。」と、仰る。 実際にお目にかかっていれば手でも握って差し上げられるのだが、なにせ電話だ。 私も自分の言葉を捜すので精一杯。 「気が張っていらしたんですね、すごいです。 でも、今こうして泣いてくださって、変かもしれませんが、私も嬉しかったです。 御夫婦なのですから、御主人もきっと奥様の気持ちを解って下さっておいででしょう。」 ・・こんな時は言葉を使うのが本当にもどかしい。

電話を切ってからふと時計を見たら、30分近くも経っていた。 師走の長電話。 切なかったけれど、どこか少し心が温かくなった。 電話だったから、逆に良かったのかもしれないな、とも思った。

|

« 相対的に | トップページ | お歳暮 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ゆっくり泣きましょうよ、ね。:

« 相対的に | トップページ | お歳暮 »