ゼンマイ煮
去年の春に摘んできて作った「干しゼンマイ」が、冷蔵庫の野菜室の隅で眠っていた。 早く食べないと新しいゼンマイが生えてきてしまうな、と、煮物を作ることに。
ぬるま湯で戻してから適当な長さに揃え、一度茹でこぼした。 ふっくらしたところで大ぶりの鍋に移す。 相棒は下茹でしたシラタキと油揚げ。 ほんのちょっとの胡麻油で炒めて、ひたひたのだし汁と砂糖、味醂、日本酒。 しばらく経ってから醤油を加えて、煮汁がなくなるまで気長に炒り煮してゆく。 単純で直球勝負の、お約束通りの「日本の味」だ。
最近煮物を作るのがちょっと楽しくなってきた。 煮初めの薄い味がだんだん煮詰まってゆく過程での、味の変化が面白いのである。 具材から味が煮汁に出てだしや調味料や油分と渾然一体となって、それがまた具材に染み込んでゆく。 それを予想しながら、足し算したり引き算したりして煮汁の味を決めて煮込む。 予想外に甘くなってしまい、出来上がり間際になってから大幅な調整を迫られて慌てたり、逆に一発で考えていた通りの味に仕上がった時の嬉しさはひとしおだ。
最初の味見ではゼンマイから思ったよりも苦味が出ていたので心配していたが、煮詰まって煮汁の味が濃縮されてゆくにつれ目立たなくなり、出来上がりでは苦みをほとんど感じない位になって、ほっと胸を撫で下ろした。 後ろに隠れる味、前面に出てくる味、それも時間差でコロコロ入れ替わって不思議。
煮物は奥が深いな、と、思う。 まだまだ経験が必要みたい。
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