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2008.05.28

落とし所

「船場吉兆」が遂に、というか、やっと廃業だそうで。

ここのお店関連のニュースを聞く度に内心思っていたのは、「落とし所を間違えたよなあ」、ということだった。 初めの「牛肉産地偽装の云々」の段階で、看板を汚した恥を言い訳にして、とっとと暖簾を下ろすことができていれば、『伝説』になれたかもしれなかったのに、ここまで醜態を晒すニュースが流れてしまっては・・。 料理という本業以外にも、従業員と経営者の確執といった内情まで暴露されてしまったのはキツかった、という気がする。

ご存知の通り、創業者だった故・湯木貞一氏には5人のお子さんがあって、それぞれに独立して、それぞれの吉兆(京都・神戸・東京・『本』・そして船場)を名乗っているから、船場吉兆もその中の一つにしかすぎない訳だが、同じ吉兆の看板を背負っている以上、他の吉兆への悪影響は避けられない訳で、船場吉兆の経営者本人たちは「やり直せる」と考えていたかどうかはともかく、他の吉兆からの「いい加減に廃業してくれないか」という無言有言のプレッシャーが、今回の幕引きに繋がった大きな力だったのではないかと考えられる。 船場以外の他の吉兆では、内心ほっとしたというのが正直なところではないだろうか。

吉兆はたくさんの有能な料理人を育てて、世に送り出してきた。 そして、今でもそれは続いている。 船場吉兆でさえ、例外ではない。 他の吉兆に比べてリーズナブルでカジュアルな印象は否めなかったが、逆に、吉兆ブランドを一般市民にも手の届く形態に発展させた功績は、船場吉兆によるものだとも言える気がする。 料亭を利用する機会の無いような一般市民が、「吉兆さんのお御馳走」と言って喜んでくれている間に、船場吉兆から独立していった料理人達の新しいお店が評判になってきていた間に、せめてできるだけ綺麗な形で暖簾を下ろすことができたら、それで良かっただろうに、と、思うと、他人事ながら残念でならないのである。

『青柳』『バサラ』の小山氏を先頭として吉兆を巣立っていった人材が、これからも日本料理を引っ張っていってくれることに、食べる側のひとりとして期待しつつ・・。(←小山さん御贔屓。)

こちらにはこんな記事も。 それぞれの吉兆が、今回の船場吉兆の一連の問題をどう捉えてどう対処し、どのように踏み台にしてゆくのか、正直興味深いところではある。 同族なだけに、関係が上手くいっている時は良いのだろうが、こじれてしまうと赤の他人よりも面倒なことになる危険をはらんでいるのかもしれない。 資本関係が無かったことが幸いだったか。

船場吉兆に限らず、悪い評判や借金などでやめるにやめられない状態になっていながらも営業し続ける姿は、どうも「落とし所」として美しくなく、どこか間違っているように思えるのは私だけだろうか。 

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