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2008.05.19

スカラベ

過日熱海にあるMOA美術館へ足を伸ばしてきた。 目的は特別展「古代エジプトの美。」 エジプト文明美術品の展示会は日本でもそこそこ人気があるらしく、数年に一度位は有名な場所での開催が聞こえてくるが、どういう訳か今までずっと見にゆく機会に恵まれなかった。 たまたま仕事で余裕がなかったり、そんな期間に限って体調が悪かったりと理由はいろいろだったのだが。 なので、今回は「それ、今の内に。」とばかりに勇んで見てきた次第だ。

有名な「王家のミイラ関係」の埋葬品・装飾品やヒエログリフ(あの独特の絵文字ですな。)が彫られた石板など、見るからに「まさにこれぞエジプト!!」という品々もあれば、独自の宗教観を示す神の像(例えば頭がワシで体がヒトだとか。)の陳列など、「いったいどれだけの神様がいるんじゃい?!」なんて心の中でツッコミつつも、その存在感には圧倒されっぱなしだった。 色調や輪郭のはっきりした感じなどに、独特の威圧感があって興味深い。

エジプトでの生活を解説したパーティションもあり、食器や家具のようなものも展示されていたが、特に目立ったのは「護符」と呼ばれる一種の御守りだ。 紐を通して身につけられるようになっていたり、指輪としてデザインされたりしているが、どれも小型で大きくても2cm程度、小さなものはほんの5mm程度しかなく、展示品に沿うように用意されている拡大鏡を通さなければ、とてもディテイルまで識別出来ないくらいである。 そんな小さくても立派に神様の像だったり(中にはそんな小さいのに、子供の神様に授乳中の女神像まであって驚く。)、有名な「目の象徴デザイン」だったり、信じられないほど器用に細かく彫られ彩色なされている。 神様の化身としての動物も「護符」のモチーフに使われており、体長1cm弱のカエルや蛇等どれも非常に巧妙。 その中でも「スカラベ」と呼ばれるコガネムシのような姿をした昆虫をモチーフにした作品は、デザインも出来栄えも素晴らしいものばかりで、あまりの巧妙さに唸りたくなった。

スカラベは解説によれば「フンころがし」の一種らしい。 よりにもよって何故にフンころがしが神の化身なのか??、と、ついつい思ってしまったが、器用に足元でまん丸く転がす様子にどうやら「生命の輪廻」を結びつけて考えていたらしく、それも、神々の中でも最も最高位にあり生命そのものを司るとされる「太陽神」の化身だそうである・・。 場所や文明が変われば、昆虫や動物の見え方も変わるということなのだろうな。

今までエジプト文明と聞くと、ピラミッドやスフィンクスに象徴されるダイナミックな、大型でどこか大雑把な印象を抱いていたのだが、こんな細かい器用な造形物をたくさん目の当たりにしてずいぶんと感じ方が変わった。 人々の日常は案外細やかで、ちまちました部分で構成されていたのかもしれない、と、思った。

目の周りにタールで黒い縁取りをする化粧が日常的だったと聞いて、「皮膚ガンを誘発しなかったのか?」と思ったり、乳香入れだったという壷に針の穴ほどの口しか付いていないのを覗きこんで、「使う以前の問題として、この口からどうやって乳香を入れるのか?」と首を傾げたり、いちいち面白い展示会だった。 変な表現を使えば、エジプトの人々が身近に感じられたような、そんな風に思えた。

イートン・カレッジ、ダーラム大学所蔵 「古代エジプトの美展」は熱海にあるMOA美術館で6月4日まで。(MOA美術館は世界救世教の開祖がコレクションした展示品を一般公開している施設ですが、この美術館自体には宗教色は感じなかったのでご安心を。 ちなみに到着前にコンビニで前売り券を購入しておくとお得! 詳しくはMOA美術館の総合案内ページを。)

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