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2008.09.08

食事に飽きるということ

義父がお世話になっている施設の給食業者が変わった。 食べている本人に聞いてみると「美味しいよ」と言うし、他の方々にも概ね好評のようだ。 張り出されている献立表を客観的に見ても、おかずの変化が増えたように思われるし、午後のお茶の時間に用意されるオヤツが基本「手作り」のものに変わったらしい。 季節の果物も頻回に顔を出すようになったみたい。

食べるということをあまり重視しない方にとっては、空腹を満たすことが第一条件なのかもしれないけれど、美味しいものを食べたい欲がそこそこ強い私のような者や、他の楽しみが制限されている分だけ食べる楽しみの役割が大きくなってきているお年寄りにとっては、食事の内容が生きる楽しみに直結してくる。

給食業者もいろいろ考えた上で献立を決定しているに違いなくても、やはり同じ作り手・同じ食材仕入れ元・同じ栄養士だと、長い目で見ればどうしてもパターン化してくるのはやむを得ない。 いろいろ工夫して変化をつけたり、関係者を他の施設とローテーションさせるだけの人的規模が必要になったりもするのだろう。

義父は戦後の食糧難を経験した人だから、好き嫌いは多くない方だが、どうも見ていると、食が進まなくなるケースでは「飽きる」という要素が大きく絡んでいるようだ。

私は自分で料理を作るから、毎日少なくとも3回は、自分が選んだ食べたいものや作りたいものを、ほぼ無意識に選んで食卓に並べている訳だが、出されたものを食べている立場の他の家族にとっては、私といえども毎日同じ作り手・同じ献立製作者であることに違いは無い。 それでも「飽きた」といった苦情が聞こえてこないのは、我慢してくれている優しさなのだろうか。  「今日はこんなものを食べたい」とリクエストしてもらえれば作り手としても楽。 でも、そんなに頻回には言ってくれないのも現実だ。 その分だけ、できるだけいろいろな献立を組むように、どこの家庭内の作り手も努力しているのだと思う。 お金や栄養の心配も頭の片隅に置きながら。

私自身も会社勤めをしていた時代は、お昼を社員食堂で摂ることが多かった。 一食だけだしある程度メニューも選べるのに、それでも飽きてしまって、前夜の残り物等をお弁当に仕立てて持ち込んだりしていたっけ。 味付けの微妙な差でさえも飽きることの原因に繋がるとは、何と複雑なことよ・・。

初夏の頃だっただろうか。 学生時代からの気心の知れた友人が、知り合いの初老の方に頼まれて、有料老人ホームの見学に付き合ってきたという報告をくれた。 施設の立派さや葬儀まで取り仕切るというきめ細やかなサービスに感激して、「食事もね、毎日二種類のメニューの中から選べるんだよ!」とテンションの高い報告だった。 私は内心、どう返答すべきかかなり迷ってしまった。 感激した彼女の気持ちを削ぐのは、友人として気が引ける。 でも、食事に飽きるというのはそういうことでは避けきれないことも、義父を通してちょっとだけ学んでいたから。 結局、「まあ内情を知ってしまうとね、いろいろあるような気はするけれども。 今は出来るだけ『自分で作って食べる』のが一番だな、という気持ち。」というようなリアクションを返したように記憶している。

時々「うわっ、失敗だ!」と焦ったり、「ちょっとしょっぱかった」とか「今度は甘過ぎた」とか「なんじゃこりゃあ?!」とか「面倒くさーい!」とか文句を言えている内が、本当は一番ありがたいことなのかもしれない、と、思う。 

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コメント

飽きるってのもきっと本能なんでしょうね。
同じようなものばかり食べて偏らないようにという。

季節のものっていうのは、そういう点でもありがたいですが、
最近はほとんどの食材がいつでも手に入っちゃって、
返って日々の食事をワンパターンにする原因になりそう

投稿: Mr.Spice | 2008.09.11 05:46

本当にいつでもなんでも手に入りますね。(高いかお手ごろ価格かは別問題として。)

成熟した社会というのは、ある意味において「人を選ぶ」と思うことがあるんです。

食品を売る・買う場面においては、旬を知っている人、コストパフォーマンスを考えられる人、栄養の知識がある人、レパートリーが多い人、お金を使える人、情報を持っている・活用できる人、などなど。 うかうかしていると「提供されるがまま」に宜しくない物を食べさせられることになるんじゃないかという、危機感を抱きます。

お金に目が眩んでモラルがどっか行っちゃっているのが、成熟した社会の現状のように思えて、とても悲しいです。 そんなニュースばかりが続きますね、ぐっすん。

投稿: リーボー | 2008.09.11 20:46

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