« 棚ぼたコンサート | トップページ | 月餅の具 »

2009.04.22

横浜散歩

前述の山下達郎さんのコンサートに行った際、こちらもまたかれこれ25年振りに横浜の街を歩いて、ついでに一泊させてもらった。 ありがたいことに、友人が「達郎さんはしっかり3時間は演る人だからね」と前情報を流しておいてくれて、その通りになれば家に帰り着くのが午前様になってしまう。 オバサンがひとりでそんな時間に移動するのも何かと不用心だし、そんな時間からお風呂に入ってなんだかんだ・・というのも、この年になると結構辛いので、そそくさとホテルを予約してしまったのだった。

若い頃に足繁く横浜の街に顔を出していたおかげで、あの頃にはまだ無かった「みなとみらい周辺」を除けば、関内・石川町周辺のJR線から海までの地図は、路地も含めてかなり細かくしっかり記憶に刻まれている。 だから、なんにも考えずに歩いてもここなら大丈夫。 もちろんお店はほとんど入れ代わってしまっているけれど、ビルそのものは残っていたり、中にはその当時の面影もそのままに経営を続けているお店もあったりして、思わず足を止める。

当時は客船が停泊している時以外は本当に何にも無かった大桟橋でさえ、今ではすっかり観光スポット。 山下公園も見違えるほどきれいに整備され、港に向かってベンチがたくさん並べられている。 そして、その向こうに『マリーンシャトル』が停泊されているのを見つけた瞬間、心の奥の時計が止まってしまった。

実は私達夫婦はこの『マリーンシャトル』を貸切にしてもらって船上で結婚式をしたのだ。 今でこそそのような演出も珍しくなくなったが、「なにぶんにも初めてのことで前例が無く、結婚式など用意できる自信がない」という船会社を説得し、企画を準備し、機材を持ち込みセッティングし、参列してくれた方々の半数以上が何らかの役回りを兼ねていたという大騒ぎの末のパーティーだった。 大騒ぎだった分だけ、今では全てが強烈な思い出と化している。

当時からの船なのか、新しい船なのかは分からないけれど、同じデザインでロゴも一緒で船体も真っ白で、見た目は記憶の中と何も変わっていなかった。 ふいに「おかえり。」と言われたような気がしたのは、海風のいたずらだろう。 今はランチとディナーを提供するクルーズに利用されているようだ。 姉妹船の『マリーンルージュ』がサザンの曲ですっかり有名になってしまった分、『マリーンシャトル』はどこかひっそりとした面持ちを残していて、逆にそれが『マリーンシャトル』との秘密めいた感覚を抱かせて、ちょっぴり嬉しい。

中華街を冷やかしてお決まりの月餅をいくつか買い込み、ホテルに着いたら、フロントで海側の部屋も用意できると勧められた。 ホテルは旧「ザ・ホテルヨコハマ」だった「モントレ横浜」。 ここからなら『マリーンシャトル』も見える筈だ、と、ついつい海側のお部屋をお願いしてしまう。 港全体を抱きかかえるような夜景は素晴らしく、背景にベイブリッジやみなとみらいの高層ビル群を従え、手前の山下公園、その中にすっぽりと『マリーンシャトル』も納まっている。 コンサートから戻っても、ライブの余韻と夜景に心を持って行かれたまま、ぼんやりと長い時間外を見ていた。

翌朝、ここぞとばかりに普段より随分早起きして、前の日に行けなかった山手の方へ。 女学生達がまだ誰も来ない坂道を登り、港を見下ろして深呼吸。 雨の近い湿った空気の中に、少し潮の香りがした。 きっといつかまた来ることになるだろう、と、思った。 まだ若い頃横浜に来る度に感じていたものと、寸分違わぬ同じ感覚で、そう思った。

不思議なもので、街は人を作る。 どの街にも「ここに来るなら、こんな人であってもらいたい」というような街からのメッセージがある。 多くの場合、それは人がコントロールできるものではなくて、その街に染み付いているような感じのもの。 今になって漸く、心に余裕をもって散歩できるようになった私を、横浜の街は優しく受け止めてくれているように感じられた。

帰りはあの頃にはなかった「みなとみらい線」に乗ってみることに。 駅まで歩く途中、貿易ビルのエントランスに、2階のレストランへ続く流線形の外付け階段を見つけた。 お店は変わっているようだったが、階段が昔のまま残され使われていて、懐かしい旧友に再会したような気分。 街路樹のイチョウは高い枝から小さな花をたくさん落として、紙吹雪のようなシャワーで祝福してくれていた。

他でもない横浜でのコンサートに行けたことは幸せだった。 ありがとう、またいつか。   

|

« 棚ぼたコンサート | トップページ | 月餅の具 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 横浜散歩:

« 棚ぼたコンサート | トップページ | 月餅の具 »