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2009.09.02

Blue moon

義父のなんだかんだをきっかけにして、しばらくの間、心が「夏眠り」をしていたようだ。 原因もはっきりしているし、自分自身も「これは時間で解決できる」とどこかで客観的に安心していたので、あるがままに身を任せていたのだが、昨日になってようやく浮上してきた感じがする。 こうなれば薄皮が剥がれるように気持ちも解放されてゆくもので、今日はもう通常状態。 感性の能力も8割方回復した自覚。

年老いた家族を看るのだから、先の見えない閉塞感は如何ともし難いのは事実だ。 それでも、今回ぐっと進行した症状や老化が「悪化」という急性期を超えて「日常」に落ち着いてしまえば、それはそれで心も乱れなくなる。 この状態に慣れてきたということなのだろうか。 こんな風にして、何かを諦めつつ受け入れることを、繰り返してゆくものなのだろうか。

一番辛かったのは実は私の実家からの電話だった。 そろそろ母が年齢相応に、脳の情報処理能力が衰えつつあるのが見てとれる状態だが、義父の状態と娘夫婦の生活を心配して、ここぞとばかりに電話をしてくれる。 詳細を知ったからと言って彼女には何ができるわけでもない上、明日は我が身のことと身につまされて彼女の憂欝を増やすことにもなる。 こちらは親の性格を知っているし、むやみに心配をかけるのも嫌なので、あまり余計なことは話したくないし、できれば愛情を以ってそっとしておいてほしい状態なのだが、それでも親心として放ってはおけないと、頻回に電話をかけてきた。 残念ながら娘の私は「お喋りすれば気が紛れる」という女性によくあるパターンを持ち合わせていない性格なので、只でさえ誰とも話したくない抑うつの中、余計に重荷だ。 しまいには、「しばらくそっとしておいてほしい」と伝えて、ようやく静かになった。 ・・冷たい娘・・許してもらおう。 余裕が無かったのよ。 完全に浮上したら、慎重に言葉を選んで余計な心配をさせないように情報を処理した上で、ちゃんと現状を説明するつもりだけれども。

なんだかんだで義父はまだ当分入院生活を余儀なくされる予定だが、今日の面会では少しばかりコミュニケーションがとれて嬉しかった。 ちょっと前まで、何の反応も無く口をぽかんと開いて、完全に「思考がどっか行っちゃってる」状態だったので、これでは疾病が治っても生きる気力を失って天国へ昇ってしまうのではないかと、本気で心配した。 天国へ昇ること自体は心配しても仕方のないことなのだが、(まあ色々とありましてね、)このまま昇ってしまったら本人も私達も介護施設の方々も医師も、それぞれに後悔することを抱えそうなケースだから。

私の方は、何よりも自然環境が豊かなことと、日常生活においてはストレスがほぼ回避されていること、祈る方法を知っていること、これらにはずいぶん救われた気がする。 こんな抑うつ状態は15年振りぐらいだったかな。 ある程度まで行けばスッと浮き上がって来る感覚も経験済みのことで、「あっ、そうそう、こんな感じ」、と、懐かしく思い出した。

気が付けば9月。 早いな。

一昨日の夕方に青い月を見た。 心情的なものではなくて、物理的に青い色の月。 青と言っても青空の水色を濃くしたような色調で。 普通は青空に月が浮かんでいると月自体はぼんやり白いでしょう? そうじゃなくて、青。 ちょうど台風の雨雲が通り過ぎた直後で、この山全体が深い霧に包まれており、霧の薄い所からは水墨画のような灰色~黒で雨雲や山の稜線や木などの景色が透けて見えて、その上に所々夕焼けの紅色が霧と景色を染めていた・・そんな景色をバックに青い半月。 見たことのない色使いでびっくり! 多分生まれて初めての経験なんじゃないかな。  『Blue moon』 うっかり綺麗な言葉。 吉兆になると良いなと思いつつ、じっと見上げていた。

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