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2009.09.25

レオ・レオニさんの絵本

「TICO and the Golden Wings」 という絵本を、英語の原文で読む。

作者はレオ・レオニ。 日本でも有名な「スイミー」を、子供の頃に読んだ方も多いのではないだろうか。 オランダで生まれ、イタリアで絵を学び、その後はアメリカで活躍した絵本作家であり、イラストレーターでもあり、グラフィック・デザイナーとしても有名、と、プロフィールには書いてある。 惜しまれつつ1999年に89歳で昇天。

「スイミー」は同じ種類なのに、本来の赤い色ではなく、真黒に生まれてしまった小さな魚が、色によって仲間外れにされる寂しさと疎外感に苛まれながらも、やがて自分にしかできない役割を見つけ出し、仲間に迎えられるというストーリーだった。

そして、この本の「TICO」も、羽が無い状態で生まれてきた鳥で、神の使いによって黄金の羽根を得るが、それによって今まで親しくしてくれていた仲間が嫉妬を抱き、仲間外れにされる。 強靭な羽によって外国に飛んだTICOは、多分インドと思われる国へ行き、そこで出会った貧しい人々に、自分の黄金製の羽根を一枚ずつ抜き渡して助けてゆく。 すると、抜いた後に生えてくる羽は、仲間と同じような真黒な羽で、全ての黄金の羽根を使い終えたTICOは、仲間たちと同じ外見となり、それで結果として再び仲間達に受け入れられるというストーリーだ。

最後にTICOは、外見上同じになることで仲間として受け入れられた喜びに咽びながらも、「みんなそれぞれ経験していることが違うんだから、みんなそれぞれに違うんだ」ということを、一人(一羽)だけ悟っている。

レオ・レオニ氏が生まれた国を離れた事情も分からないし、行った先々で人種的な差別を受けたのかどうかも分からないが、彼の作品の中にテーマとして横たわる「different」は重くて切ない。 そのdifferentが優れたものであるほど、相手は嫉妬を覚え打ち解けてくれないものだという、人間の哀しい習性をも描き出す。

ディテイルまで丁寧に書き込まれ、それでいて余計なものを省いたシンプルな絵の美しさと、大人だからこそ分かるテーマの深さのギャップが、とても印象深い。 全編において同一に描かれている主人公のTICOの円らな瞳に、なんだか泣けてきた。

英語自体は決して難しいものでなく、多分中学生でも読みこなすことができると思う。 でも、これを日本語に訳すとしたら、シンプルなだけに余計に難しいような、そんな気がした。 実は大人向きの絵本なのかもしれない。

 ● 「TICO and the Golden Wings」 Leo Lionni    Alfled A. Knopf社 

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