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2009.11.10

三島散策、ナメコのお土産付き。

過日、秋の良い天気に誘われて、三島の街をぶらぶら歩いてみようということになった。

伊豆箱根鉄道・三島田町駅近辺に車を置いて、三島大社方面へ。 いかにも昔は参道として賑わいましたという感じに商店が並ぶ道を、店先を冷やかしながら進む。 路地からご家族連れが出てきて、お嬢さんが着物を着ている。 あれっ?、と、よく見ればパパもママもそれなりにお洒落した服装だ。 「あー、七五三!!」 すっかり忘れていた。 そうだよな、もう11月だもの。 小さな草履をぱたぱたさせている足元がいかにもおぼつかなくて、逆に微笑ましいが、本人は一生懸命歩いているのになかなか進まなくて苛立っている様子だ。 可愛い。

そんなご家族の後ろをのんびりと進むと、洋菓子店が。 店名を見た『ますたあ』が思わず「ここか・・」とチェックを入れた。 実は数ヶ月前、静岡県下の別の街でたまたま行列を見つけ、誘われるように並んで買ったケーキがとても美味しくて驚き、ネットで調べていたらご実家のお店が三島にあることが判って、一度行ってみたいと思っていたお店だ。 「こんなところにあったんだね。」 和菓子も洋菓子も作っているような昔ながらのお菓子屋さんといった雰囲気。 大ぶりの小麦まんじゅうも魅力的だったが、ここはやはり洋菓子系で、と、スティックタイプのベイクド・チーズケーキとひと口大のチョコレートケーキを購入し、店先のベンチでいただく。 どちらもお店の雰囲気からは想像できない(失礼。)洗練された味と香りで、完成度が高くてびっくり。 こんなお店で(重ね重ね失礼。)こんなケーキをこんな値段で提供しているなんて、侮れないぞ三島! 首都圏だったらひとつ300円くらいには設定できそうなケーキが、驚きの100円台だ。 初っ端から、いやはや失礼しました、と、恐縮する。 場所を覚えたので、そのうちちゃんとしたショートケーキを買いに来よう。

七五三の参拝で賑わう三嶋大社では、境内に露天まで並んで大変な賑わいだった。 みんな着飾っているから、なんだかお正月のように華やかで明るい。 晴れて良かったな、と、思う。 焼きそばのソースやチョコレートの混然とした匂いを背に、住宅街を抜けて「三嶋暦師の館」へ。

京都から移り住んで、代々「三嶋暦」と呼ばれる古い時代の陰暦のカレンダーを司っていた河合家の旧家を文化財として保全し、三嶋暦の資料を展示している。 学術員のような方からの丁寧な解説を聞きながら、建物の内部を見学。 現代と違って、身の回りの情報源が本当に限られていた時代において、カレンダーは単に月日を定めるのみならず、農業や家事、婚姻や出産といった全ての日取りを誘導し、つまりは、一般市民の生活全般を掌握する「権力」として利用されていたとのこと。 奥深さに思わず「うーん」と唸る。 それにも増して、月の満ち欠けを基準とした暦の複雑な算定、陰陽道にもつながる天文観測、風水のような自然の摂理や神様と親しくする方法・・全てが複雑に絡み合って大変なことになっている。 凄く興味を持ったが、半面ブラックホールのように奥が深すぎて怖い気もした。 質問したり答えて教えていただいたり、で、なんだかんだと一時間近く。 お金も取らずに丁寧に対応してくださった学術員?の方にお礼を言って、館を後にする。

さてお腹も空いたので、遅いランチのお店を探しながら路地を歩いていると、初老の女性に話しかけられた。 ごく普通の一般的ないでたちだったので、道でも尋ねられたかと立ち止まると、「小松菜いらない?」、なんと驚いたことに行商の方だった。 ちょっと迷うが、小松菜ならあっても困らないなと踏んで、「じゃあ、せっかくなので。」 全く良いお客さんだな。 柔かそうな瑞々しい小松菜がひと束100円。 傍で覗きこんでいる『ますたあ』が「どちらからいらしてるんですか?」、と、尋ねると、「函南から。」だそう。 「あっ、そうそう、ナメコなんていらないよね?」。 「えっ?いりますいります!(正直なところ、小松菜よりもそっちの方が嬉しい。)」 「買ってくれる? ありがとう。 うちは山でナメコも作ってるもんでさ。 洗うと傷むんで土付いてるから、石付き落としてさっと水洗いして使ってね。 炊き込みご飯にすると美味しいよ。」 「ナメコで? 炊き込みご飯? それはやったことが無いなあ・・」 「あら、美味しいよ。 お醤油でね、ナメコは洗ったら生のまんまお米の上に乗せて炊けばいいから。」 「ふーん、作ってみます。」 「うん、やってみな。 美味しいよ。」 「良いこと教わりました。」 ビニール袋にたっぷり入ったナメコが150円・・なのだが、シイタケほどの大きさが透けて見える。 「これ、本当にナメコ??」、と、いう疑問を飲み込み、少々首をひねりながら、また歩き出した。

「湧水のまち」と名乗っているだけのことはあって、いたる所に小川が流れ清水が湧き、水に沿うように歩道も整備されている。 風も無く穏やかで11月なのに歩いていると汗ばむような気候だ。 水音やせせらぎの音が聞こえてくると、ふっと胸元に涼風が入ってくるような気持ちになる。

三島が鰻で有名なのは百も承知で、何か毛色の違うお店を求め歩いて、ついにブラジル国旗を掲げた小さなお店を見つけ出した。 料理写真のカラーコピーが窓のガラスにたくさん貼り付けてあるが、いかにもあちらの品々という感じで、よく判らないものもたくさんある。 その上、隣接の駐車場にビーチセットのような簡易チェアーを並べて、オープンエアでコロナビールを飲み、現地語でお喋りしている若いおにーちゃんも。 なかなか良い感じだ。 思い切ってドアを開けると、たどたどしい日本語の御夫婦が出迎えてくれた。

名前を覚えられなかったが、小麦粉の皮に、鶏肉や豆・タマネギなどをトマトベースのパプリカ味で煮たものと、黒オリーブ・ゆで卵と一緒に包んでオーブンで焼いた「味の濃い焼ピロシキ」みたいな一品、それにタコライスとバドワイザーを頼んで『ますたあ』とシェアする。 美味しい。 日本でよくあるタコライスとはだいぶ違う。 レタスとトマトがたっぷりでサラダの感覚に近い。 レタスにはちょっと複雑な塩ベースの下味がついていて、その上からパプリカ風味のドレッシングがかかっているので、全体にしっとりして嵩が抑えられ、量が多いのにちゃんと食べられるし、ご飯やひき肉ともよく混ざって一体感が出る。 サルサソースはしっかり辛くて、そこに野菜類のさっぱり感が加味され、全体にトマトの濃いうま味がまとめ役。 これは美味しい! 日本人の料理は最近変なバランスで甘ったるい印象のものが多い中、塩とトマトとパプリカのシンプルな味と香りが、素材を邪魔することなく主張しているのが新鮮だった。

お店の御夫婦と美味しかった旨の話をしていたら、店内に現地食材がいろいろ売られているのを見つけたので、引き続いて覗かせてもらうことに。 色とりどりの乾燥コーン(真っ黒に見えるものもあった。生なら紫色だろうか?)、豆類、ジュースのパックや調味料、よく分からない素材の缶詰が並び、興味津々。 すると、薄茶色の小指の先ほどの硬いものがぎっしり詰められている大きな袋を発見。 コーヒーシュガーかと思って袋の裏を見ると、「乾燥じゃがいも」とある。 カウンターの奥から見ていたご主人が、「それ、美味しいもんじゃないよ」、と言うから思わず大笑い。 「どうやって使うんですか?」 「水と一緒に。(多分、戻すということを言いたいのだろう。) ジャガイモが採れない時に使うけど、日本は生のジャガイモがいつでも買えるから、そっちを使った方が良いに決まってる。」 そりゃあそうだとみんなで笑って、店を後に。 正直者の御夫婦でなんだかありがたい気分になった。

再び帰りの方向へ南下しながら小川沿いを歩いてゆくと、川の中でじゃぶじゃぶと緑色の植物を洗っている方を見つけた。 腰を伸ばしたタイミングを見計らって、「それは何ですか?」、と、声をかけてみると、「ああ、これはね、三島梅花藻(ミシマバイカモ)。 梅の花みたいな花が付く藻だから、梅花藻っていうの。 増やしてやってるんだけど、これから寒くなるとちっちゃいのは黄色く枯れるんで、ひっこ抜いちゃってる。」 「大きな株になれば冬を越せるんですか?」 「そう、多年草だから。」 「へえ~そうなんですか。」 「もう少し歩いて下流に行くと、群生地があって花が咲いてるから見て行くと良いよ。」 「行ってみます。 ありがとうございました。」 なるほど、数十メートル先の川の中では、ワサワサと茂った藻が水の流れに身を任せて優雅に漂っており、よく見ると水面に1センチ弱くらいのクリーム色の花を出している。 小ぶりで上品な花が点々と。 何とも優しげだ。 藻の全体に「逆らわない生き方」が徹底されているように見えて、逆らわないことの強さについてぼんやりと思いを馳せていた。

三島田町まで戻って帰途につく。 よく歩いた一日だった。 見ず知らずの人にたくさん触れ合った気がした。 タイミングは不思議だ。

さて、件のナメコ。 袋から出してみたら、やはりよく売られているナメコより格段に大きい。 しかも、あの独特のぬめりがほとんど無い。 小さいものでも傘の直径3センチ以上。 下処理してから、とりあえずあまりいじらずにそのまんま食べてみたかったので、ひと口大の四つ切りにして、さっと茹でて大根おろしと共に醤油で。 加熱したらいくらかつるんとしたけれど、ぬめりはかなり弱い。 それでも食べてみれば、確かにあのナメコの香りだ。 「ああナメコも普通のきのこだったんだな」などと、当たり前のことを思った。 確かにこれなら炊き込みご飯にしても、違和感なく「きのこご飯」として成立しそうだ。 作ってみようと目論んでいる。 (ちなみに、小松菜はごく普通に美味しい小松菜だった。)

  • ベルーン      三島市大社町 18-3
  • 三嶋暦師の館   三島市大宮町 2-5-17
  • PICA PAU    三島市広小路町 4-7   

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コメント

ちょうど昨日読み終わった『道路整備事業の大罪』(服部圭郎、洋泉社、2009)という本で、「道路整備が進まなかったことを逆手にとって成功した三島市」として三島が紹介されてました。
今度、行ってみようかな。

投稿: Lazybones | 2009.11.12 22:22

Lazybonesさん
どうも私はめっきりそういう方面に疎く、本も存じ上げませんでしたが、気楽に散策するには良い所だと思いました。

地形的なアップダウンも少なく、散策する人を意識して歩道も整備されていますし、ちょっとつまみ食いできるような危ないトラップ??もたくさん仕掛けられています。(笑)

何よりも、東海道新幹線の駅からすぐに歩き出せるというのは魅力的ですね。 いたるところで散策マップを入手できるようでした。 マップを手にひらひらさせながら歩いている方々も、そこそこお見受けしましたよ。

投稿: リーボー | 2009.11.13 15:27

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