山の頂は遠く
2か月ほど前、感覚とは何なのか?という壁にぶち当たり、哲学から始まり参考になりそうな本を片っ端から読んできた。 科学的なものから、ともすると怪しげなものまで、あらゆる分野に渡って非常に興味深かったのは間違いないが、肝心な「そもそも『感覚』とは何なのか?」という問いについては、人間はまだ「それが解れば誰も苦労していませんよ!」という状況下にあるようだ。
哲学、宗教学、脳科学、神経生理学、量子力学、そして、トランスパーソナル心理学、生物学等々、様々な分野の最先端の研究者たちが、それぞれの分野で乗り越えなくてはならない課題に直面して、それぞれのアプローチを始めた。 共通しているのは、「どうやらこの課題は、かなり本質的なものに関わっているようだ」という予感のようなもの。
・・ここで、高い山に登る様子をちょっと想像していただきたい。 研究者たちが抱えた課題が登山だとする。 山の山麓には何か所もの登山口が存在している。 お互いのことを知らずに、それぞれが別の場所から登り始めた。 ところが、進むにつれて霧が立ち込めて自分達がどこまで進んでいるのかが分からなくなってきたので、学会発表という形で「とりあえずこんなことやって、ここまで来ました」という『のろし』を上げる。 すると、どこか知らない遠くの方からも複数の『のろし』が上がっているのが見えた。 調べてみたら、全然違う登山道を登ってきた別のパーティーで、しかも、扱っている学問も点々バラバラなのに、目指している頂上はどうやら同じ、もしくは深く関連していることが分かった。 ・・と、そんな状況のようだ。
人間とは何か、死とは何か、死んでからの先はどうなっているのか、人間の脳は何をやっているのか、心とは何か、魂はあるのか、人間の進化とはなにか、人間はどこへ向かおうとしているのか、宇宙の構造とは、宇宙と人間の関係はどうなっているのか。 その中に「感覚とは何か?」もすっぽり包まれてしまっている。 総合的に英知を集約する必要があることが、ようやく分かってきた段階らしい。 私が本を読んだくらいで解決できるレベルのものでは到底ないのだ。 なんだかとんでもない所に足を突っ込んでしまって、やはりズブズブの状態だったということになる。 人間は多くのことを分かっているようで、実は人間のことを何ひとつ分かっていなかったような、「一周回って同じ所に戻ってきてしまった」ような、妙な気持ち。
死だの魂だの心だのと言うと、どうしてもオカルト的な要素が含まれてしまいがちだが、それをオカルトの分野に納めずに、なんとか科学的に考え直してみようという姿勢が救いのようにも見える。 人間はなかなか面白い所に進もうとしているように思えて心強い。
さて、個人的に次はトランスパーソナル心理学をちょっとばかり齧ってみたいところだ。
●「心と脳の正体に迫る~成長・進化する意識、偏在する知性~」 天外伺朗・瀬名秀明著 PHP研究所 2005年初版
(↑天外さんは本名土井利忠さん。 ソニー・インテリジェンス・ダイナミクス研究所所長で、AIBOの開発責任者を務めた方。 瀬名さんは「パラサイト・イヴ」を書いた作家。 この本は二人の対談を中心に展開している。)
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コメント
>「一周回って同じ所に戻ってきてしまった」ような、妙な気持ち。
ははは~。
って、笑っては失礼だけど、なんだかとっても共感してしまいます。
頂は遠そうだけど、面白いよねぇ人生は。。。
まだ、知らないことがいっぱいあるようですねぇ。
♪わがゆく道いついかになるべきかは
露知らねど主は御心なし給うわん
投稿: かおる | 2009.12.16 16:00
かおるさん、こんばんは。
そうですね、とっても面白いです。 面白いと言えるようになってきたのも、やっとという気がします。
生きていると良いこともあるもんだ・・。
知らないことがあるのは、なんだかワクワクします。 例えば「老いること」とか、その先にあるだろう「死」なんかも、実は結構楽しみだったりして。(ちょっと変かも知れませんが。) だって、まだ経験したことが無いんですもん! 当然ながら、だからといって、自ら選びにいったりはしませんけれど、来るものには逆らわずみたいな感じです。
投稿: リーボー | 2009.12.16 20:10