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2010.12.20

加熱の妙

我が家は雑木林の中に建っているようなものなので、毎年秋の終わりにワサワサと落ち葉が降り積もる。 それが今年は例を見ないほど大量で、そんなに木々達は元気が良かったのかと、今頃になって思い知らされている。

落ち葉は自然に分解されてやがては土に戻ってゆくものだから、ほとんどは放っておくのだけれど、建物の壁に吹き溜まって山のように積もっているものはさすがに邪魔なので、集めて焚き火をする。

たまたまサツマイモを持っていなくて、夕飯にポテトサラダにでもしようと思っていたジャガイモをアルミホイルで二重に包み、埋み火の中に放り込んでおいた。 ほぼ鎮火してから拾い上げて台所で剥いてみたら、いい塩梅に焦げ目もついて見るからに美味しそう。 マヨネーズで和えてしまうのが勿体無くなり、軽く塩と胡椒だけ振ってそのまんま食卓に出した。 焼け具合もよろしくホックリとして、しかも、ジャガイモ本来の香りが力強く残っていて、いつものジャガイモと同じとはとても思えないほどの出来栄えに、すっかり驚かされた。

食品素材が昔のように美味しくないということが、暗黙の了解事となって久しい。 品種も育て方も土壌も気候も昔と同じではないのだし、その上食べ物の種類や量もふんだんにあるようになってしまったのだから、感覚も変化していることと思う。 そして、実は加熱方法によっても出来上がりはずいぶん変化してきたのではないかと、予想外に美味しいジャガイモを食べながら考えた。 熱源が変わり、火力が変わり、調理器具の熱伝導率も変わった筈で、もっと言えば火を使わずにマイクロ波で調理できる世の中になったら、そりゃあただ単に「ジャガイモを加熱して、食べられるようにするだけ」だって、出来上がりは当然違うだろう。

時間の短縮や効率化によって失ってしまった美味しさも実はあるんじゃないか、と、思いを馳せていた。 埋み火の遠赤外線作用に、「恐れ入りました」だった。 古からの方法は、実は侮れない。 

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コメント

色々便利なモノが氾濫する現代ですけど、焚き火でしか味わえないヤキイモの美味しさってありますよねー。

昔、ガスのグリルで焼いたサンマは「ワタが苦い」とあまりお気に召さなかったウチの娘が、デッキで炭火で焼いた秋刀魚はあっという間にペロッと頭と背骨だけにしたのが印象的でした。

投稿: Mr.Spice | 2010.12.22 10:16

やっぱりわかるんですね、お嬢さんも。
きっと理屈じゃない美味しさなんでしょうね。
味だけではなくて香りとか焦げの感じとか、全体的、総合的なもののようにも思います。

デッキで炭火って、かっこいいですね。
七輪買っちゃおうかなあ、って、迷い続けています。

投稿: リーボー | 2010.12.22 15:49

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