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2011.05.29

たまには一人旅 その5

宿泊をお願いした「中嶋屋旅館」は町屋造りで坪庭もある。 ガラス窓は木枠で、窓についている鍵も、枠の重なった部分の穴に鍵を通して回し閉めるという懐かしい仕組み。 「さすがに玄関先やお風呂は新しくしてありますけれどね。 なるべく昔のまんま残そうと、がんばってます。」と、女将さん。 古いけれどちゃんと手入れされていて清潔だ。 「昔はこの通りだって川だったんですから。」 雨が降って増水すると鯉やら鰻やらがピチピチ跳ねて道に出てきたり、幼い子供が流されたりしたのだそう。 「『おどり』に夢中になってね、川にはまって、浴衣のすそを濡らして戻ってきたお客さんなんていっぱい居らっしゃいましたよ。」 30年位前にさすがに車社会の波に逆らえなくなって、道路にしたのだそうだ。 勿体無いなどと思ってしまうのは、ここで暮らしていない者の我侭だろう。

嬉しいことに、朝ごはんにはちゃんと「明宝ハム」も添えられている。 昨日のオジサマに習ったのだが、この辺りの食事処には「明宝定食」なるメニューが存在しているらしい。 「豚しょうが焼き定食」の野菜部分、つまりキャベツのざく切りに斜め切りのキュウリの薄切りを数枚立てかけて櫛形切りのトマトを添えたもの、そこに「明宝ハム」の厚切りスライスを並べて、マヨネーズをポトッと。 それとご飯とお味噌汁とちょっとの漬物、だそうだ。 みんないったいどれだけ「明宝ハム」ラブなんだ?! (いや、私も好きですが。) 「明方ハム」について聞いてみると、「あ、あっちはね、ソーセージ。」だそう。 自治体の第3セクターが作っているのが「明宝ハム」で、JAが作っているのが「明方ハム」とか。 ややこしや。

ゆっくりと過ごしてお支払いを済ませる。 手荷物を引き続き預かっていただけるとのことで、ありがたく甘えることに。 「今日はどちらへ?」 「今日は川のこっち側を回ってきます。」

吉田川の南サイドは、またちょっと雰囲気が違って町民みなさんの普段の生活の匂いが身近に感じられる。 水路も生活に密着した印象で、泥の付いた野菜をジャブジャブ洗っていたり、ちょっとした洗物をしている場面にも実際に出くわす。 「ちょっと見せていただいても良いですか?」 「なぁに~? ただ洗ってるだけよ。 蕗を切ってきたから。 それでも良いならここに降りていらっしゃい。」 階段が至る所に設えてあって、お店や家の玄関先、勝手口や小道から川面に降りられるようにされている。 「まさか本当に使っていらっしゃるところを見られるとは、実は思っていませんでした。」 「(使う人も)減ったけどね、泥を落とすのは家の外で済ませた方が便利だから。 それでも結構みんな使ってるよ。」 ちょっと羨ましくなる。

有名な「いがわこみち」には物凄く立派な体格に丸々と太った鯉がわんさか泳いでいて、なおも観光用に「鯉のえさ」が無人販売されている。 こんなに大きくなっているのを目の当たりにしてしまうと、さらにエサをあげるのにも躊躇し、結局見ているだけとした。 水の流れは相当速いので、そこで生きてゆくにも体力は必要なのだろうけれど、差し引いてもちょっとメタボ気味か。 幼児のお子さんを連れた若いお母さんと立ち話をして、水辺の木陰を楽しませてもらった。 毎日通るのにやっぱり子供は動物が好きみたいで、飽きずに「おさかなさん、おさかなさん!」と毎回大はしゃぎなのだそうだ。 ここに来ないと機嫌が悪いらしい。

これまた有名な「某お寺の庭」は新緑がすばらしく、水琴窟の音も涼しげ。 だったのだけれど、ご本堂でオリジナルのお香だのお数珠だの、仏教の入門書だの、絵葉書だの、たくさん並べて売っていて、なんだか興冷めしてしまった。 何もご本堂の中で、ご本尊の目前で売らなくても、どこか別の場所は無かったのかな、と、余計なことを思う。

こじんまりした美術館や、古い建物を展示室として見せている場所、それにお寺の庭、藍染の工房、飴屋さん、駄菓子屋さん・・全てがどこかで見たセットのようですらある。 それに相対して、現代風の、ジェラートのお店や食品サンプルの工房、観光客相手のお店などが、また自然に混じっていて、今自分がいつの時代に生きているのか分からなくなってしまうような、不思議な感じ。

宿の荷物を引き取ってから、昨日教えてもらったお蕎麦屋さん(この町の中では新顔のお店だそう。)で、開店と同時に早めの美味しいお昼をいただき、例のお味噌屋さんへ。 店先へ足を踏み入れた途端に、湿っぽいしょっぱい香りが充満していて、いかにもという感じだった。 本当の名前は「郡上地みそ」というらしい。 「たまり」も非常に魅力的だったが、重たそうだったので躊躇する。 そのうちに通信販売で買ってみよう、と、諦めて自分を納得させた。 別のお店でお決まりの「明宝ハム」も一本買い、急にずっしりと重たくなったカバンに怯んだ。 (つづく。 あと一回で終れるかな?) 

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