« みっちり | トップページ | カマスゴ »

2013.02.02

捉え方

久しぶりに「おでん」を炊いた。 理由は単純。 「ちくわぶ」を見つけたから、だ。 以前にも書いたが、大阪で暮らし始めてから、やはり「ちくわぶ」が売られている所には、なかなかお目にかかれない。

別に関東圏で生活している時でさえ、「ちくわぶ」なんて、そんなに意識していなかった具材なのだけれど、手に入らないことが判ると急に手に入れたくなる、この不思議さ。 ・・無い物ねだりの他の何物でもない。

でも、やっと手に入れて食べたら、一仕事終えて肩の荷が下りたような気分になる。 それが美味しいとか不味いとかの問題ではなく、もう、食べたことだけで満足しているような状態。 いったい何なんだか。 ちょっと自分に呆れ気味だ。

まぁ、私の食い意地が張っているせいもあって、食べ物の面から大阪の暮らしを考えてみると、根本の違いは「出汁」との付き合い方なんだと学習した。 東京の出汁が味重視なのに対して、こちらの出汁は香り重視だ。 で、それぞれに見合うような味付けの差が、そこに乗っかっている印象である。 旨みの濃さだけを比べれば、東京の方がはるかに濃い。 でも、ふたを開けた瞬間のふわ~っとした香りは、「えっ?!」と、たじろぐ程に素晴らしい。

それを「香りの程には旨みが無い」などと表現してしまっては、元も子もなくなるので、「後味や引き際がきれい」というくらいに表現しておくのが無難だと思う。 どちらがどう、とは、単に好みの問題になるし、育ってきた環境が違えば、味覚の要素に対する優先順位も、当然違う筈だ。

とりあえず、最近の課題は「美味しい蕎麦屋さんを見つけ出すこと」だ。 やっぱりこちらは「うどん文化圏」で、件の香り高い出汁を適当に含んで、ふっくらとしたうどんは美味しい。  お蕎麦を、味も出汁も濃いつゆに、ちょこっと浸して啜る・・これは、こちらでメジャーな麺つゆでは難しいだろうというのは、容易に想像される。 あのつゆでは、お蕎麦には合わない!

でもねぇ、無いものねだりで、やっぱり食べたくなるんですよ、関東風のお蕎麦。 だから、お店を見つけておかないとな、と、なる。 わがままとも言えるし、変化に適応しきれなくなった中年の哀しみとも言えるし、食への拘りとも言えるし。 とほほ・・まっ、良いか。

当然ながら、私の炊くおでんは関東炊きだ。 兄からもらった美味しい日本酒と合わせて、週末の夜をリラックスして過ごす。 何よりの贅沢かもしれない。

てな感じで、それなりに元気にやっておりますです。
 

|

« みっちり | トップページ | カマスゴ »

コメント

はじめまして。通りすがりの料理人です。
料亭で修行し、小さな料理屋の雇われ料理長をやってます。

記事の内容、もっともです。
おでんは関西で別名「関東煮(かんとうだき)」ですから。
元々は関東の料理なんでしょうね。こちらのものはうどん文化から出しが変形していると思います。

私は関西生まれですが、関東のほうが圧倒的に美味しいと思うものが四つあります。
ひとつは記事にある蕎麦、そして寿司、さらに鰻、とどめに天麩羅。これらは本場が関東にあると思います。


2008.02.18「春は苦もの」の記事から迷いこんで来ました。今、勉強しているテーマでいい資料がなく困っています。もしよかったらこの精進料理の書名を教えてください。

投稿: むねっち | 2013.02.05 00:56

むねっちさん、コメントをありがとうございました。

まずは、本の件です。 くだりの記事の前後に数冊読んでいるので、可能性が高い順に並べておきますね。

「魂の食 精進料理レシピ125」 藤井宗哲著 朝日新聞社

「永平寺の精進料理」 大本山永平寺著 学研

「西川幻房和尚のキッチンで作る精進料理」
  西川幻房著 淡交社

65%くらいの自信で、「魂の食」だった気がするのですが。 違っていたらごめんなさい。

・・そうですね。 確かに天麩羅も、まだ満足のいくものには大阪では出会えていません。 魚の煮付けの砂糖の使い方も(味醂なのか??)ずいぶん違うように感じられて興味深いです。 まだまだ探索の途中。

さて置き、「通りすがりの料理人」って、なんだかカッコイイ! 美味しいものでお客様方を喜ばせて差し上げてください。 いつかご自分のお店が持てるといいですね。 応援したいです。

今日は八百屋で菜の花が売られていました。 良いお値段がつけられていたので、手は伸ばしませんでしたが。 あの青くてほろ苦い香りを思い出していました。

またふらりと、「通りすがり」にお立ち寄りください。 お待ちしています。

投稿: リーボー | 2013.02.05 20:37

丁寧なお返事をありがとうございます。

リーボーさん、本当に料理がお好きなんですね。よく勉強されておられる。それに対し私は日頃の勉強不足を恥じるばかりです。さっそく本を手配してみます。

自分の店を持てればよいのですが、私はHCL患者で経済的にも体力的にも難しいです。でもあきらめてはいません・・・。

藤井宗哲さんとは「料理の鉄人」のパーティーで少しお話をさせて頂いたことがあります。なんて、あまり書くと私が誰だか分かってしまいますね(笑)

本当に、ありがとうございました。

投稿: むねっち | 2013.02.13 03:45

いえいえ、料理は実はそれほど好きではないのです。 単に美味しいものが食べたいだけでして・・。 

そうでしたか、HCL持ちさんですか。 お仕事と治療の両立が大変そうで気になります。(私は看護師でもありまして、若干は知識があります。) 上手くは表現できませんが・・疲れを溜めるなと言われても、難しいでしょうか。 むねっちさんのお作りになった料理を食べて、笑顔になるお客様の様子が、きっと何よりの心のお薬でしょうね。

いろんなことをあきらめるのは、最後でいいんじゃないかな、と、思ったりします。 

投稿: リーボー | 2013.02.13 20:44

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 捉え方:

« みっちり | トップページ | カマスゴ »