リアルとバーチャル
たまに私の実家方の(既に亡くなっている)祖父が、「非現実的手段」で私の元にやってくるらしく、日本酒が飲みたいとのこと。 残念ながら私はいつもビールかラムかウィスキーなので、急に日本酒と言われても持ち合わせが無い。 料理用のお酒ではあんまりなので、今度買い物に出かける際に見繕ってくるから、と、しばらく待ってもらうことにした。
祖父がどこに居るのか知る術もないが、普通に考えたら飲んだり食べたりするような世界ではないだろうから、「飲みたい」と言われたところで妙なものだ。 かと言って、お供えされても嬉しくないらしく、私が代理として(?)飲めばそれで良いらしい。 正直なところ訳が解らないが、お酒や食べ物だったら付き合うのもやぶさかではないから、まっいいか、ぐらいの気持ちだ。
最近はめっきり耳にしなくなった「セカンド・ライフ」、あそこにもバーなのかビア・パブなのか、そういった飲み屋があるらしい。(私は不参加なので聞き覚えだけ。) で、自分のアバターに好みのお酒を飲ませることができるし、そこに集う人と会話しながら飲んだり、一杯奢ってあげたりすることもできるという。 アバターにお酒を飲ませている人が、現実社会では下戸だったりする場合もあるだろうし、現実も酒好きだったりも当然あるだろうし、どんな欲求を満たすためにアバターにお酒を飲ませているかはそれぞれな筈。 でも、アバターがどんなに美味しいお酒を飲んだって、当然自分はシラフな訳で、じゃあ何が楽しいのかと言われたら、上手く説明できなくなる。
これって、祖父と私の関係に全く同じじゃないか。
私の過ごすリアルな現実世界を真ん中にして、祖父の過ごすバーチャル世界がすぐ隣り合わせにあって、別側の隣には「セカンド・ライフ」のような別のバーチャル世界があるのだろうか。 もっと書いてしまうと、私には祖父の過ごす世界はバーチャルだけれど、祖父本人にとってはリアルな筈で、逆に私の過ごす世界は祖父にとってバーチャルなのではないだろうか。 ・・などと考えていると訳が判らなくなる。 メビウスの輪を見ているような感覚。
とりあえず買ってきた日本酒、寒くなってきたのでお燗にして飲んだ。 「美味しい!」と思ったのは事実だが、私が美味しいのか、それとも私を通して飲んだ祖父が美味しがったのかは謎。 「おじいちゃん、美味しいねー!」と心の中で言って、それ以上考えるとお酒が不味くなりそうだったから、やめにしておいた。
まったくもう・・何が何だか。
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